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スポーツ新聞社、H氏の夢

スポーツ新聞社、H氏の夢

09年の東京都学童女子軟式野球大会。前身は江戸川区の交流大会

 H氏と初めて会ったのは、09年7月、東京都江戸川区で行われた「東京都学童女子軟式野球大会」の取材の時だった。
 人でごった返す開会式前の本部テントに江戸川区学童少年軟式野球連盟の上野忠利会長を訪ねると、会長は背の高い、50代と思しき男性を紹介してくれた。それがH氏だった。氏は東京新聞&東京中日スポーツ(以下、東中)の人で、連盟とともに大会を主催する同社の代表として来場していた。

 汗を浮かべながら名刺を差し出す氏の第一印象は生真面目そうな人だなあというもの。しかし恐ろしく忙しそうで、一緒に来ていた同僚を私に引き合わせるや、カメラ片手にテントの外に飛び出して行った。
 まぶしく輝く青い空、白い雲。ジャケット姿のH氏は真夏のグラウンドには似合わなかったけど、とっても生き生きして見えた。

 H氏は江戸川区や府中市の女子学童大会には必ず姿を現した。なぜなら東中はこれらの大会の主催や後援をしており、H氏はその仕掛け人だったからだ。

 東京都には古くから関東女子軟式野球連盟やIBA-boysが主催する女子学童大会があったが、それとは別に女の子の大会を開いていたのが上野会長を中心とする江戸川区学童少年軟式野球連盟だった。連盟は99年に初めて区内の女の子を集めて「リバーエンジェルス」を結成すると、区の少年野球大会にエントリー。03年からは支部ごとに女子チームを作って春と秋に大会を開くなど、女子学童野球の環境作りを一丸となって進めていた。

府中市の大会(11年)

 H氏はいち早くその江戸川区の活動に注目し、連盟に声をかけて05年に連盟と東中が共催する「東京都学童女子選抜軟式野球 交流大会」を立ち上げた。そして07年に府中市で女子学童大会が始まるときには、会社に働きかけて後援を実現した。
 どちらの大会にも東中の横断幕が張られ、試合結果は東京新聞や東京中日スポーツ紙上で紹介されたため、東京都の女子学童野球関係者にとって、東中は最も馴染みのある新聞社になった。

 冒頭のシーンは江戸川区の交流大会が東京都軟式野球連盟(以下、都軟連)の後援を取り付けて新しい大会になったときのもの。それ以来私がグラウンドに行けないときは、「みんなとても頑張っていい試合をしたって書いてくださいよ」なんて言いながら試合結果を送ってくれた。なんだか東京都の女の子たちのお父さんみたいだった。

 その大会が今年(12年)、遂に江戸川区の手を離れ、都軟連と東中共催の「東京都知事杯 東京都女子学童軟式野球大会」として新たなスタートをきった。形のうえでは過去の2つの大会とは別物だけど、女子学童大会の様々なノウハウをもつH氏や東中のみなさんが都軟連と協力して作った大会だけに、私から見れば3つの大会は1つの流れの中にある。

                   ☆

 
 7月7日の開会式終了後、プレスルームでH氏をつかまえた。あい変らず生真面目に、そしてクルクルと忙しそうに動いていたが、声をかけると私の質問に長身を折り曲げるようにして答えてくれた。
――8年前、東中さんで一番最初に女子大会を開こうと言ったのは、やっぱりHさん?
「そう。でも会社がしっかり動いてくれたからできたんです。僕だけの力じゃありません」
――なんで女子大会を作ろうと?
「女の子たちにも試合をやらせてあげたかったからです。小学生の関東大会に行ったとき、女の子たちが私たちはベンチウォーマーだ、私たちも試合に出たいって言ったんですよ。その当時女の子は代打か、先発しても外野だったから」
――反対はなかったですか?
「それはなかった。でも女の子だけでやれるの? っていう雰囲気はありましたね。だってほら、いつもプロ野球選手を見ている人たちだから。でも子どもたちが喜んでいる顔を見たら、続けなきゃってみんな思ったんですよね」

画像の説明

――江戸川区の交流大会が都軟連が後援する大会になり、今、都軟連が主催する大きな大会になってどう思いますか?
「ここまで育ってくれて、やっぱりうれしいです。昔は女の子が集まらなくて、男の子を3人まで入れていいなんていうところから始めたんですから。それに今は女の子のレベルが上がってエースで四番なんていう子も増えたし、女性監督や女性コーチが増えたのもうれしいですね」
――子どもだけでなく、大人の意識も変わったと?
「そうですね。今度の大会ではユニフォームもほとんどの支部がそろえてきたでしょう? 最初はユニフォームはバラバラでもいいですか? なんていう問い合わせがたくさん来てたのに、最終的にはみんなとても積極的に取り組んでくれています」
――今後の課題は?
「公式戦としてしっかり定着させていくことです。でもこれまでは僕が旗振り役だったけど、これからはそうじゃないと思うと、ちょっと寂しいね」

 それまでテンポよく話していたのが少しトーンダウン。まるで娘を嫁にやるような? 表情を見せた。ここまで全力で大会を育ててきたのだから、無理もない。

――これからの夢は?
「彼女たちの中からスター選手が出ることかな」
 そう言って笑った。

 いい笑顔だった。大会が終わった後に飲む酒は、きっと格別おいしいに違いない。

 

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