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マドンナジャパン新時代

 特集

マドンナジャパン新時代。アジアカップ新設と新指導者たち

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2つの変革をもたらす人事

 2017年5月25日、侍ジャパン女子代表(マドンナジャパン)の新監督として、学校法人履正社で「履正社レクトヴィーナス」と「履正社高校女子硬式野球部」を率いる橘田恵さん(34歳)の就任が発表された。99年に始まる女子野球日本代表の歴史上、初めての女性監督だ。

女性初の代表監督。34歳

 全日本女子野球連盟は、かねてより女性監督誕生の機会を模索していたといい、協議の末、国内実績と豊富な国際経験(後出のプロフィール参照)を評価して、就任を要請したという。

 橘田さんの代表監督就任は、2つの面で新しい時代の幕開けを告げるものだ。一つは女性目線の指導が取り入れられるであろうこと。これまでの監督はすべて男性で、村上雅則、広瀬哲朗、新谷博、大倉孝一といったメジャーリーグ、プロ野球、アマチュア野球のOBたちが、日本を世界一にするべく、持てる技術を教え、戦略を練ってきた。
 しかし橘田さんは、以前から女子ならではの戦い方を考えてきたからだ。

 もう一つは日本球界きっての国際人として、国際大会を勝負の場としてだけでなく、世界的視野を養う場と考えていることだ。言い換えると、日本という窓から世界を見るのではなく、世界から日本を俯瞰できるのが、橘田さんの特徴であり強みである。そのベクトルは、代表選手たちの意識やあり方を変えるに違いない。

 その橘田ジャパンの初陣は、9月上旬に香港で開かれるアジア杯だ。W杯予選として今年初めて作られた大会に、日本はU18(高校生)チームと、高校の春の全国大会ベスト4の監督というコーチ陣で臨む。高校の指導者が日本代表チームの監督やコーチに入るのは、04年以来13年ぶりだ。
 全日本女子野球連盟はアジア杯の指導者については、今後も高校の春の全国大会ベスト4の監督たちで臨む方針だといい、指導者にとっても、新しい時代の幕開けといえるだろう。

 新指導者たちのインタビューは後半にお伝えする。

アジアカップ新設の目的と、第8回ワールドカップの展望

第1回BFA女子野球アジアカップ
会期、開催地/2017年9月2~7日、香港
出場国・地域/日本、チャイニーズ・タイペイ、韓国、香港、インド、パキスタン
W杯出場資格/上位4カ国
備考/W杯(2年おきに開催)が行われない年に開催(2年おき)。

 全日本女子野球連盟の山田博子専務理事にお話をうかがった。

――アジア杯ができた理由を教えてください。
山田 現在、アジアでは女子野球がとても盛んになってきています。日本、韓国、香港、チャイニーズタイペイ、パキスタン、インド、スリランカ、シンガポール、中国の9つの国と地域に女子野球のチームや活動があり、インドネシアにもチームを作ろうという動きがあります。そんなアジアにおける女子野球の普及発展のため、またW杯の地域出場枠が定められているため、アジア予選が必要になって、アジア杯が作られたのです。

――W杯の予選ができたのはアジアだけですか?
山田 はい、予選を確定させているのはアジアだけです。15年はアメリカのパンナムゲームに女子野球の部ができて、カナダ、アメリカ、ベネズエラ、キューバ、プエルトリコの5カ国が参加しましたが、今年は女子野球の部がないので、別に予選のようなものを行うか検討中だそうです。

――アジア杯を作ったのは、WBSCですか?
山田 いいえ、香港野球協会の強い希望を受けてアジア野球連盟が承認しました。もちろん日本もその実現のために動いています。

――ということは、今後も香港で開催されるのでしょうか。
山田 まだわかりません。

現在、日本はW杯5連覇中

――日本はU18チームを編成して大会に臨みますが、その理由は?
山田 若い世代に国際経験を積ませたいと思ったからです。オーストラリアをはじめとする外国チームが、すでにそういう試みをしているのです。またアジア杯をU18(高校生)で行くと決めた時点で、監督コーチは高校の監督から選出することにし、さらに選出条件を春の全国大会ベスト4の監督というふうに決めました。

――アジア杯の監督コーチ、選手は、そのまま第8回W杯に移行するのですか?
山田 いいえ、W杯に出場するトップチームは、監督は橘田監督がそのまま指揮を執る予定ではありますが、コーチ陣および選手は、おそらく違う方式で選考、選出を行うと思います。

――第8回W杯の参加国数と地域枠を教えてください。
山田 WBSCによると、アジア4、ヨーロッパ1、オセアニア1、南北アメリカ4、ワイルドカード(地域枠に入らなかった国)2の、12カ国です。ただしこれはあくまでも12カ国で開催する場合の配分で、総数が変われば地域枠も変更になるとのことでした。

――開催国はどこですか?
山田 こちらもWBSCによると、まだ決まっていないそうです。なんとか実施できるように、WBSCが各国に働きかけているところだそうです。

――今後日本はW杯に向けて、どのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか。
山田 コーチや選手の選考方法と合わせて、これから協議していきます。しばらくお待ちいただければ幸いです。

アジアカップの指導者たち、その略歴と抱負

橘田恵(きっためぐみ) 
履正社高校女子硬式野球部および、履正社レクトヴィーナス監督

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昭和58年、兵庫県三木市出身。兵庫県の少女野球チームで野球を始め、神戸ドラゴンズや仙台大学野球部で男子と一緒に硬式野球に打ち込む。女子野球日本代表のトライアウトに落ちたことをきっかけに、04年と05年、オーストラリアに野球留学。06年に帰国後、花咲徳栄高校、南九州短期大学で女子硬式野球部のコーチや監督を務め、鹿屋体育大学大学院でコーチングも学ぶ。12年より現職。13年の松山の全国大会でレクトヴィーナスを、17年春に高校を全国大会で優勝に導く。09年よりテクニカル・コミッショナーとして国際大会の運営に携わり、16年の第7回女子野球W杯では、運営の最高責任者であるテクニカル・ディレクターを務めた。 

 日本代表のトライアウトに落ちた私が代表監督になるなんて。依頼を受けたとき、本当にびっくりしました。でも今まで世界の女子野球を見てきて私なりに考えるところがあったので、お引き受けしました。

 私の野球観が変わったのは、やはりオーストラリアに行った時です。それまでは男子の中で根性根性でやってきたのが、真面目にやるだけでは海外では評価されないことがわかったのです。そこに楽しむ気持ちがなければいけないと。楽しむことこそ、その人の良さを引き出すという考え方なんですね。
 でも私が指導者としてそれを実践できるようになったのは、ここ数年のことです。おかげさまで「おたくの選手は本当に楽しそうに試合をしている」とよく言われますが、選手と一緒に野球を心底楽しむことができたからこそ、全国優勝できたのだと思います。
                 
 アジア杯はもちろん、W杯も優勝(6連覇)を狙います。テクニカル・コミッショナーとして様々な国の試合を見てきたので、外国の監督や主要メンバーの動きはある程度わかるのが、私の強みかもしれません。

 また日本は走塁とバントが抜群に上手いし、ピッチャーもいい。それは大きな武器になるので、コーチの皆さんと一緒に、選手たちをどう生かすか考えていきたいと思います。
 女子のスピードを生かした戦術も追求したいですね。
 初めて国際大会に臨む選手たちの、プレッシャーを取り除くことにも努めます。やはり大会を楽しんでこそ、ベストパフォーマンスが生まれると思うので。

 ただ私が一番期待しているのは、大会を通して選手の皆さんがグローバルな視野を養うことです。確かに日本はこれまでの方々の努力でW杯で5連覇するまでになりました。でもただ強いだけではだめなんです。世界一になったからこそ、国際貢献が求められているからです。
 それに応えるためには、技術と広い視野、国民性の違いを受け入れられる懐の深さ、志を兼ね備えた人材が必要です。世界の人々に「自分もあんなふうになりたい」と思ってもらえるような人ですね。

 アジア杯に高校生で臨むのは、そのための準備です。次代を担う人たちには、大会に参加したことをきっかけに、「世界に女子野球を広めるのは自分なんだ」という気概をもってほしいと思います。
 そして、日本人が国内だけでなく、世界の女子野球をリードする時代を目指したいです。

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第7回W杯にて

以下、五十音順

斎藤賢明(さいとうかたあき) 埼玉栄高校女子硬式野球部監督

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昭和32年、福島県会津若松市出身。埼玉栄高校で4年、栄東高校で16年間男子野球部の指導にあたり、00年に埼玉栄高校女子硬式野球部の監督に就任。04年には第1回女子野球ワールドカップ(於・カナダ)で代表監督を務め、準優勝に導く。高校生の全国大会、春優勝6回、夏優勝6回、女子野球ジャパンカップ優勝1回。女子硬式野球黎明期から、女子野球の環境作りと人材育成に取り組んでいる。

 私が代表監督を務めた04年と今の選手を比べると、実力は格段に上がっています。でも野球はレベルが高くても強いとは限らない。球は速くないけどコントロールが良くてゲームが作れる投手とか、駆け引きができるバッターとか、そんな選手がいるかどうかで勝敗が決まってくる。今回集まった選手たちはみんな将来性のある人ばかりだと思いますが、合宿を通してその能力を見ていきたいと思います。国際試合で海外を知るのはとても素晴らしい経験ですが、あわせて国内の環境作りにも目を向けてほしいですね。

田代恭規(たしろやすのり) 作新学院高校女子硬式野球部監督

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昭和39年、栃木県宇都宮市出身。作新学院高校で主に三番遊撃手として活躍し、明治大学では三塁手に定着。現在、公益財団法人宇都宮市スポーツ振興財団勤務。09年、作新野球部の臨時コーチをしていたとき、宇都宮市野球協会が結成した女子学童チーム「宇都宮ウィングス」の監督を頼まれ、以後、県内の女子野球環境の拡大に合わせて中学生の栃木県選抜、作新学院高校女子硬式野球部の監督を歴任。田代氏の歩みは、そのまま栃木女子野球の歴史でもある。

 春の全国大会でベスト4になったことが侍ジャパンにつながって、驚いています。同時に、今までやってきたことが形になって、やってきて良かったと思いました。選手たちのおかげです。全国的に高校野球部が増えて野球を続けられるようになったうえに、今度は高校時代に国際大会に出場するチャンスができた。子どもたちにとってものすごく刺激的だし、夢が広がります。普段の練習から取り組み方が変わってくるでしょう。10代は技術だけでなく色々なことを吸収できる年頃なので、その経験を生かして成長してほしいですね。

長野恵利子(ながのえりこ) 福知山成美高校女子硬式野球部監督

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74年、兵庫県淡路市出身。幼い時から野球が大好きだったが、当時は全軟連が女子の登録を認めていなかったため、野球を諦めてソフトボールの道へ。99年、大鵬薬品女子ソフトボール部をやめ、00年、女子野球日本代表のトライアウトを受けて合格。以後08年の第3回女子野球W杯まで8回にわたり代表に選ばれ、うち5回、主将を務める。09年に福知山成美高校女子硬式野球部監督に就任し、14年、夏の全国大会で初優勝。

 久しぶりにジャパンのユニフォームを着られることは、素直にうれしいです。橘田ジャパンの初陣ですから、コーチとして監督がやろうとする野球をしっかりとサポートしていきたいです。また国際大会では、環境が違ったり想定外のことが起きるなど、何があるかわかりません。そういう時の選手のサポートもしていければと思います。アジアカップに出場する高校生たちの中からは将来ジャパンを背負う選手が出てくると思います。その意味でも今回の大会のすべてを肌で感じて、これからの日本を背負うという気概をもって臨んでほしいですね。私自身、指導者として出場する初めての国際大会なので、この経験を今後に生かしたいと思います。

■代表に選ばれた高校生20人は → こちら(全日本女子野球連盟)

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