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世界の女子野球は今

特集 2016年1月25日

第7回女子野球W杯直前情報。世界の女子野球は今

4連覇を果たした第6回女子野球W杯

2014年の第6回女子野球ワールドカップ(以下、W杯)宮崎大会から早1年4カ月。その後、世界の女子野球界はどのような動きを見せているのだろうか。第7回W杯を9月に控え、その現状やW杯情報などを全日本女子野球連盟事務局長で、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)女子委員会委員の山田博子さんにうかがった。

女子チームが急増中のアジアの国々

――海外の女子野球の現状を教えていただけますか?
山田 今アジアが盛り上がってきていて、スリランカ、シンガポール、パキスタン、インドがすでにナショナルチームを作って、今年韓国で行われる第7回W杯に出たいと言っているそうです。またインドネシアがこれから女子野球を始めるということも聞いています。

女子野球ランキング 2014

――インドは松山の第3回W杯(08年)に出場しているのでナショナルチームがあると聞いても不思議はないのですが、そのほかの国は最近女子野球が盛んになったのですか?
山田 インドやパキスタンは女子野球の歴史がけっこう古くて、どちらも全国大会が開かれています。でもそれ以外の国がナショナルチームを作ってワールドカップに出場するというのは初めてのチャレンジだと思います。今度のチームについて言えば、シンガポールは基本的にソフトボールの選手で編成されていて、スリランカは福岡にいらっしゃるスジーワ・ウィジャヤナーヤカさんが軍隊の女性を集めてお作りになっています。
 スジーワさんは福岡県高校野球連盟の審判員をなさっていて、昨年春の選抜大会で外国人として初めて甲子園球場で塁審を務めて話題になった方です。母国スリランカへの野球の普及にも熱心で、彼の働きかけで女子野球がスタートしたと聞いています。

――アジアでは韓国、香港、台湾も女子野球を盛り上げようとがんばっていますね。
山田 そうですね。韓国では07年に韓国女子野球協会ができて全国大会を開いていますし、LGカップという国際親善大会も開催されています。香港では各国のクラブチームを招待した国際親善大会「フェニックスカップ」が08年から行われています。

――アメリカ大陸はいかがですか?
山田 去年初めてパンナムゲーム(正式名称はパンアメリカン競技大会。4年に一度行われるアメリカ大陸の国々が参加するスポーツの祭典)に女子野球の部ができて、カナダ、アメリカ、ベネズエラ、キューバ、プエルトリコの5カ国が参加しています。
※参考→カナダ野球連盟

――なぜパンナムゲームに女子野球が入ったのですか?
山田 詳しい経緯はわからないですね。   

――いずれにしてもアジアに新しいチームがたくさん誕生しているということですね。
山田 はい、アジアはとても元気です。

――15歳以下や12歳以下の国際大会が開かれる予定はありますか?
山田 各国の野球連盟が代表チームを編成するような国際大会は予定されていませんが、親善大会のような、プライベートなチームが集まって開催される大会は今後できていくでしょうね。

――日本は若い世代の育成に熱心で、去年は全日本女子野球連盟が主催する中学生の硬式の全国大会もできましたね。でも海外ではオーストラリアに15歳以下の大会があるくらいでしょうか。
山田 あとはアメリカも交流大会をやっています。たしか男の子のなかでやっている13歳以下の女の子を集めたものだったと記憶しています。でもこれはあくまでも有志の大会で、アメリカ野球連盟の主導ではないようです。そこが日本とは違うところですね。

――逆にいうと、日本は意識面でも環境面でもかなり進んでいるということでしょうか。
山田 そうですね。

米代表チームに胸を貸した日米交流大会

――昨年7月、アメリカで「クーパーズタウン ウィメンズ ベースボールクラシック2015」という交流大会が開かれましたが、どんな大会だったのですか?
山田 アメリカ野球連盟が「日本チームを招待してレベルの高い親善試合を実施したい」と連絡してきたので、当連盟(全日本女子野球連盟)が急きょ2014年代表および代表候補メンバーを募って遠征したというものです。日程的にパンナムゲームの直前でしたので、レベルの高いチームとの練習試合で最終の調整をしたいという先方の意図があったと思います。アメリカは最強メンバーだったのに対し、日本はフル代表ではありませんでしたが、2勝2敗という成績でした。

アメリカの若手実力派、ゴルタレス選手

――試合の内容はいかがでしたか?
山田 レベルが高くて見ごたえのあるゲームばかりでしたね。それに日本はメンバーが少なかったため、普段は守らないポジションについたり、前回のW杯MVP投手の里綾実選手がショートを守ったり、そういう意味では面白かったですよ(笑)。

――アメリカは若手も出ていたのですか? たとえば前回のW杯決勝で完投したサラ・ヒューデックとかショートのジェイド・ゴルタレスといった選手です。
山田 いました。今回ヒューデックはコントロールがなかなか定まらなかったのですが、バッティングがよかったです。ゴルタレスも守備、打撃ともすごい選手ですし、盗塁を仕掛けられる選手も増えてきているので、やっぱりアメリカは脅威ですね。

――パンナムゲームの結果はどうだったんでしょう。
山田 アメリカが優勝しました。交流戦の最後の日、日本チームからアメリカチームに「絶対金メダル取ってきてね」とエールを送っていましたので、アメリカから「金メダル取れました」と連絡が来たときは、私たちもすごくうれしかったですね。
※パンナムゲーム参考→アメリカ野球連盟

女子野球のリーダー国、日本が果たすべき役割

――今後日本が果たすべき役割は何でしょうか。
山田 色々な制度を利用して日本から指導者を送り出したいですね。サッカーでは元選手が海外に行って向こうのナショナルチームの監督になっていますが、そんなふうにアジアをはじめとする海外に貢献ができるようになったらいいなと。たとえばアジアの女子野球は日本だけでなく近隣諸国が強くなることで大きく発展すると思います。台湾はアジア2位でW杯の枠に入ってきていますが、台湾と日本の差はまだまだありますから。
 それから海外から日本に野球を勉強しに来たいという人がいたら、全面協力することですね。

一番左がベネズエラのマエテさん

――その窓口は? だいたい個人的なツテを使って野球留学すると思いますが。
山田 向こうの連盟から打診されたら全日本女子野球連盟が受けます。以前カナダ野球連盟から選手が日本で数カ月野球留学をしたいと打診があり、尚美学園大学さんに受け入れをお願いしたことがあります。

――他にはありますか?
山田 日本人の女性審判員を増やしていきたいと思っています。日本は女性審判員がすごく少ないですよね。やっぱり強いチームを作るだけでなく、審判までふくめて世界の女子野球に貢献していくというのが望ましいと思っています。

――女子の審判員が多いのはどこの国ですか?
山田 アメリカやカナダが多いですが、どういう育成システムがあるのかはわかりませんが、とにかくベネズエラの審判員は男子も女子も技術が高いと聞いています。たとえばマイテさんという方は20代でとても若いんですが、決勝戦やメダルがかかる大事なゲームで球審に指名されることが多いです。
 それから韓国には英語がしゃべれる女性審判員がいるのがいいですね。そこは日本ががんばらなくてはいけないところです。

――審判の技術はどこで学ぶことができますか?
山田 全日本野球協会で行っているアンパイアスクールで学ぶことができますし、ライセンスは3級から取れます。でもこれから審判員を目指す方は、世界を視野に入れて技術だけでなく語学も勉強してくださるとうれしいです。

第7回女子野球ワールドカップ情報

――今年行われる第7回W杯について教えてください。
山田 会期は9月3日~11日、場所は釜山広域(ぷさんこういき)市、機張(きじゃん)郡の球場を使って12チームで開催されます。球場の名前は今建設中らしくてまだわかりません。監督は今回も大倉孝一、コーチは清水稔が務めます。

――参加チーム数が12というのは多いですね。前回の宮崎大会は8カ国でした。
山田 2014年までは8チームという基本ベースがあって、そのうえで主催者とWBSC(世界野球ソフトボール連盟)の協議で参加チーム数が決められていました。でも2016年からは12カ国とされています。

――12チームの内訳は?
山田 アジア4、アメリカ大陸4、オセアニア1、ヨーロッパ1、ワイルドカード2ということがWBSCから発表されています。

――アジアの4枠にはどこが入るのですか?
山田 ランキングから言えば、日本、台湾、香港そして韓国かと思いますが、WBSCが開催地・韓国をどういうかたちで出場させるかによって変わってくると思います。たとえば韓国をワイルドカード枠で出場させることになれば、それに代わる1枠に冒頭でお話しした新しい国が入る可能性はあります。でもこれはWBSCがこれから判断すると思います。

第6回W杯でMVPに輝いた里綾実選手。後ろは川端友紀選手

――WBSCは今、オリンピックに男子の野球と女子のソフトボールを復活させようとしているので、女子野球の振興にあまり熱心ではないのでは?
山田 その質問にお答えする前にWBSCという組織についてご説明しますね。WBSCの中には、野球部門(Baseball division)とソフトボール部門(Softball division)があり、それぞれが今までやってきたことを引き続きやっています。WBSCになったから女子野球がおざなりにされているということはなく、野球部門は男子の野球も女子の野球も一生懸命アピールしています。つまりそれがWBSCの女子野球に対するスタンスということになります。

――女子野球の振興は野球部門の女子委員会が担っていて、メンバー5人のうちの一人が山田さんなのですよね。
山田 はい。

――女子の競技規定作りについて新しい動きはありますか?
山田 実は規定は女子委員会が決めるものじゃないんです。野球部門の中に技術委員会というのがあって、そこが決めるのですが、2012年に投本間も塁間もホームランラインも全部今より小さくすると言ってきて驚いたんです。技術委員会は女子委員会に相談なく物事を決められる権限をもっているのですが、女子野球の現場ではまだ何も検討されていないので、時期尚早と話して白紙にもどしました。
 ただフェンスを置いてホームランラインを縮めることについては合意しました。

――すると今度の韓国のW杯からホームランが出やすくなるのですね?
山田 WBSCでは今、女子のホームランラインの設定について最終調整をしているので、その結果次第ですね。具体的な距離や採用時期などの詳細は、決まり次第当連盟のホームページなどで発表していきます。

――W杯のトライアウトが12月から2月になったのはなぜですか?
山田 応募人数が大幅に増えてしまったことと、選手の技術が非常に上がっているので審査が大変困難だったからです。

――何人ぐらい応募してきたのですか?
山田 140人強です。

――トライアウト後のスケジュールは?
山田 4月から毎月のように合宿をします。そのスケジュールは2月のトライアウトのあとに発表します。

――プロも招集するのですよね?
山田 そうですね。召集する時期も人数も日本女子プロ野球機構さんとこれから調整していきます。

――いずれにせよ、来月には2016年度女子野球日本代表が決まって、7カ月後にはW杯が始まるわけですね。
山田 はい、5連覇できるようにがんばります。

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