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始まった新しい試み② 少年野球連盟の新たな挑戦

特集 動き出した中学生の軟式野球環境

始まった新しい試み② 少年野球連盟の新たな挑戦

足立区の春季大会総合開会式.(14年)。写真提供/足立区少年軟式野球連盟

計り知れない影響力をもつ野球連盟の動き

NPBガールズトーナメント」ができてわかったこと。それは女子野球環境を作るうえで全日本軟式野球連盟や地域の野球連盟が動くことがいかに大切かということだ。

 今まで長い年月、心ある人たちが女子の環境を作ろうとコツコツ努力を重ねてきたが、女子チームの数はなかなか増えず、女子野球の認知度も上がらなかった。ところがNPBガールズトーナメントの開催が決まり、全軟連が47都道府県の軟式野球連盟に代表チームを出すよう要請したとたん、今まで女子チームが作られたことがなかった県に選抜チームができたり、小学生の県大会ができたりした。地域の野球連盟が作る女子大会も同じで、そのダイナミックな動きはとうてい個人の力の及ぶところではない。

 そんななか、東京都のある少年野球連盟が女子中学生クラブを作ったと聞いた。地域の連盟は仕事をたくさん抱えているため、連盟が作るチームといえば短期の選抜チームと相場が決まっていて、通年活動するクラブを作るなんて聞いたことがない。ましてや女子チームだ。
 彼らはどんな思いで女子中学生クラブを作ったのか、その真意を取材した。

女子に対する足立区少年軟式野球連盟の熱い思い

 2014年3月16日、東京都足立区のグラウンドで行われた春季大会総合開会式で、できたばかりの女子中学生クラブが紹介された。4月から本格的に活動を開始する「足立フェアリー少年部」だ。

連盟のチームとして堂々入場行進をする足立フェアリー少年部の選手たち。写真提供/足立区少年軟式野球連盟

 作ったのは足立区少年軟式野球連盟で、区の女子学童選抜「足立フェアリー」のお姉さんチームにあたる。赤と白のユニフォームに身を包んだ選手たちには、参加した約100チームの選手、指導者たちから温かい拍手が送られた。

 東京都は古くから女子野球が盛んな土地で、学童大会の数も多く、12年からは都大会「東京都知事杯 東京都女子学童軟式野球大会」も整備されるなど、小学生の女子野球環境は日本で一番整っている。

 しかしそんな東京都でも女子中学生の野球環境はまだまだで、13年秋の時点で有志などによるクラブチームがわずかに6つあるだけだった。そこへ足立区の連盟が女子中学生クラブを作ると発表したのだから世間の人たちは驚いた。もちろん地域の連盟が作る女子中学生クラブは全国初だ。

「実は『足立フレンズ』(足立フェアリーの前身。06年創部)のころから親御さんに『中学になると女子チームがないから、連盟が中学生チームを作ってほしい』と言われていたんです。でも連盟がチームを作るなら出場するのは女子大会ではなく区の大会になるので、女子が男子に勝つのは無理だろうと判断して見送ってきました」
 と足立区少年軟式野球連盟の増田成典理事長は言う。

左・増田理事長、右・小林監督

 それが一転して創部に傾いたのは、昨年、小学生の都大会「東京都知事杯」で優勝して全国大会「NPBガールズトーナメント」に東京都代表として出場したからだ。
「保護者のみなさんと相談して、がんばった子どもたちのために我々ができることは中学生チームを作ることだろうということになりまして」(増田理事長)

 連盟の会議にかけ、11月に正式に創部が決まった。審議の際に反対する人は誰もおらず、連盟の高島直樹会長も女子の発展のためなら全面的に協力することを約束した。足立区の行政も好意的で、ホームグラウンドとして廃校になった小学校のグラウンドを提供してくれることになったという。
 監督は学童選抜「足立フェアリー」の監督でもある小林均司氏が兼任。5月に学童チームが結成されたら中学生と一緒に練習する機会を作り、将来小学生がスムーズに中学生チームに移行できるように配慮した。

クラブを作るのも作らないのも、連盟の決断一つ

 それにしてもなぜこんなにスムーズに物事が動いたのだろう。その理由は子どもの女子野球に対する連盟の理解度が高いからだ。

 足立フレンズ時代から都の学童大会で何度も優勝し、07年と08年には当時の加藤豊連盟理事長が自ら監督としてチームを率い、IBA-boysのオーストラリア遠征に参加したこともある。足立区の女の子たちの活躍は新聞報道、区長への表敬訪問などを通して世間の人々に知れ渡り、保護者にとっても連盟にとっても大きな喜びと名誉になっていたのだ。
 そして昨年の全国大会出場。それが「子どもたちのために何ができるのか」という発想につながったのだと考えられる。

足立フェアリー少年部

 また増田理事長はこうも言う。
「今野球人口の減少や少子化の影響で、どこのチームも選手を集めるのが大変です。女子も貴重な戦力ですから、もし有志が女子クラブを作ると言って選手を集めようとしても、周りの協力はなかなか得られないでしょう。だから女子クラブを作るなら連盟がやらないと成り立たないと思ったのです。

 連盟が作るメリットですか? 親御さんにとっては責任の所在(連盟)がはっきりしていること、またグラウンド探しに奔走しなくていいし、経済的な負担も少ないことでしょうか(表参照)。だから親御さんも子どもたちも安心して野球に専念できるし、安定した環境ができれば野球を続けようという選手が増えて、野球人口の減少にも歯止めがかかるでしょう」

 それならなぜ他の連盟は女子クラブを作らないのだろう。
「おそらく他の連盟も女子を大事にしなければ中学野球が成り立たないことはわかっていると思いますよ。問題はどこまで切実にその危機感をもてるかです。クラブを作るのも作らないのも、連盟の決断一つです」
 そして静かに付け加えた。
「我々には小さな子どもと女の子の野球をおろそかにしてきたという反省があるのです。その思いがあるからこそ、今こうして動いているのです」

女子チームができると知って中学野球部をやめた子も。「男子と試合するのも楽しい」と選手たち

 足立フェアリー少年部は連盟所属チームのため、まずは区の一般の中学生大会を最優先に活動し、女子大会はその合間に参加していきたいという。
「女の子だから男子に勝てないと思わないでほしいんです。足立フェアリーの学童選手たちは男子にも負けません。その思いを中学になってももち続けて、区の大会で勝ち進んでほしいですね。選手の粒がそろえば足立区の大会で優勝して都の大会にも出られるんじゃないかと楽しみにしているんです」

 足立区の連盟は女子クラブを作るだけでなく、年内にも女子中学生大会を新設したいという。

 自分たちの手で女子小中学生の環境を作ろうという足立区少年軟式野球連盟の、覚悟と挑戦に注目だ。

※開会式の写真提供/足立区少年軟式野球連盟

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