女子野球情報サイト 

猛暑の時代

継投、コールド。「猛暑の時代」を戦い抜くために

画像の説明

 8月22日の朝日新聞スポーツ欄に、この夏の甲子園大会を振り返る記事が出ていた。
 障がい予防の観点から各校が複数の投手を育成し、今大会ではその努力が一定の成果を挙げたというのだ。初戦を突破した24校のうち、先発完投は10校だけで、あとは2~3人の投手で継投。特に熊本の秀岳館、三重県のいなべ総合は継投を軸に勝ち上がったという。

 朝日新聞は、「複数投手の育成は時代の流れであり、猛暑の大会を乗り切るためにも不可欠だ。全国の指導者にも、新時代のチーム作りを進めてもらいたい」と言っている。

 この記事を読んで頭に浮かんだのが、この夏に新設された女子中学生の全国大会(全日本軟式野球連盟主催)だ。
 ベスト4に進出したチームのほとんどが継投策をとり、かつてはよく見た「絶対的エースが、その力投で優勝をもぎ取る」というスタイルではなかった。3日間、すべてダブルヘッダーという過酷な状況を戦い抜き、優勝したオール大分ガールズの竹枝(ちくし)監督も、試合を作れる投手が5枚いたことを勝因に挙げた。朝日新聞が言った「継投を前提にした新時代のチーム作り」は、女子野球にも当てはまるのだ。

 しかし女子小中学生の指導者の中に、これを実践している人がどれほどいるだろうか。全国大会であってもなかなか選手を集められず、ギリギリの人数で臨むチームが多いなか、こんなことを言うのは酷だとは思うが、たとえ勝てなくても、選手の将来を考えて継投策をとる勇気をもってほしいのだ。同様に、負担が大きい捕手も、二番手、三番手を育てる努力が必要だろう。

 今回の女子中学生大会に出場し、連日登板したある選手は、「1日目はがんばれたけど、2日目は疲れて思うように投げられなかった」と話してくれたが、敗因を自分の責任のように感じて落ち込む彼女が気の毒でならなかった。
 別な選手は午前中は投手を務め、午後の試合には捕手として出場したが、これでは彼女はつぶれてしまう、と胸が痛くなった。

 もう一つ、大会を運営する全日本軟式野球連盟にも、猛暑の時代に対する配慮が足りないと思うのは私だけだろうか。以前にもコラムで書いたが、社会人の全国大会では導入されている点差によるコールドが、女子だけでなく、すべての小中学生の全国大会では採用されていないからだ。

 昔は35度を超える気温の中で子どもたちが試合をするなんて考えられなかったが、今はグラウンドの上は40度になるとも言われる時代。それなのに、子どもたちはその暑さの中で毎日コールドなしで戦い、特に今回の女子中学生大会では、毎試合規定回数を戦い切り、さらにダブルヘッダーを強いられた…。いくらなんでも過酷すぎやしませんか? 

 小学生の全国大会「NPBガールズトーナメント」ではこんなことがあった。第1回大会に参加したあるチームは、大会中に怪我人が出てしまった反省から、第2回大会では事前に選手全員にメディカルチェックを受けさせ、どこにも異常がないことを確認した上で出場させた。しかしやはり大会中、故障者が続出して失速してしまった。
 今年上位に進出したチームの中にも会期中に故障者が何人も出て、開催地・大宮市のクリニックで酸素カプセルに入れるなどして怪我のケアに努めたところがある。

 熱中症で倒れた、という話も、今やどの大会でも当たり前のことになってしまったが、熱中症が、実は脳梗塞のような怖い病気の引き金になる可能性は、様々な報道で指摘されている。
 女子は関節が柔らかく、怪我をしやすいということも、私のサイトで何度も紹介した。

 指導者の皆さんや全軟連には、ぜひ一人の選手に頼らないチーム作りや点差によるコールドの導入など、選手の安全対策に真剣に取り組んでいただきたい。
 野球人口の減少を食い止めるために様々な手を打っても、せっかく育った選手たちが怪我で野球をやめてしまっては何にもならないのだから。

 最後に、全日本女子軟式野球連盟や全日本女子野球連盟(硬式)など、各種女子野球連盟が主催する大会では、すべての大会で点差によるコールドが導入されていることを書き添えておこう。

powered by HAIK 7.3.7
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional