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高校と大学女子野球の展望

特集 2015年2月2日

2015年、高校と大学の女子野球界(軟式、硬式)を展望する

14年春の選抜大会で優勝した蒲田女子高校

大学女子野球界の展望

軟式野球

 全国大会ができてから今年で29年目を迎える大学軟式野球は、少子化や女子硬式野球の台頭で競技人口こそ漸減しているが、大学女子野球界を支える一大勢力であることに変わりはない。これまで軟式や硬式の女子野球界に数々の名選手、指導者、研究者を送り出してきたことが最大の功績だ。
 
 日本体育大学をはじめとする体育大学の強さは今年も続くと思われるが、全国大会で常に上位につける至学館大学や、まだ同好会ながら関西リーグで圧倒的な強さを見せる武庫川女子大学が体育大学にどこまで迫れるかに注目だ。

日本女子体育大学(攻撃)vs上智大学戦。富山県魚津市で行われる全国大会にて(14年8月)

 またここ数年実力が上がっている東海リーグの中京大学が、東海女王の至学館大学にどんな勝負を挑むのかも気になるところ。
 関東の一般大学リーグでは14年秋、跡見学園女子大学、早稲田大学、千葉商科大学が三つ巴の優勝争いを繰り広げたが、これに上智大学を加えた4強による関東女王争いからも目が離せない。

 大学軟式野球の魅力は上智大学、早稲田大学、椙山女学園大学、園田学園女子大学といった一般大学や、多摩美術大学、女子美術大学、大阪芸術大学といったアート系の大学、千葉商科大学、愛知医療学院短期大学のような商業や医療を専門にする大学など、様々な分野の大学が活発に活動しているところにある。それは野球場がなくても気軽にできる軟式野球の特性と、先人の底辺拡大の努力によるところが大きい。

 大阪体育大学や日本体育大学からは女子プロ野球選手が数人出ているが、それ以外の大学にも身体能力の高い、野球センス溢れる選手が何人もいるので、知られざる逸材をみつけに大会に足を運ぶのも楽しいだろう。

大学軟式野球部
<主な大会>
全日本大学女子野球選手権大会(8月、富山県)
ジャパンカップ(女子軟式野球王座決定戦)(10月、東京都)
関東六大学女子軟式野球連盟 春季、秋季リーグ(4月、9~10月、東京都)
関東大学女子軟式野球連盟 春季、秋季リーグ(4~6月、9~11月、埼玉県)
東海地区大学女子野球 春季、秋季リーグ(4~5月、9~10月、愛知県)
関西地区大学女子軟式野球連盟 春季、秋季リーグ(5~6月、10~11月、大阪府)

硬式野球

 大学や専門学校の硬式野球部は高校硬式野球人口の増加を背景に増えており、昨年はプール学院大学、環太平洋大学、日本大学国際関係学部にチームが生まれた。

 それに伴い、大学の勢力図に変化が現れている。
 かつては元プロ野球選手の新谷博氏を監督に据える尚美学園大学に優れた選手が集まり、戦績も一歩リードしていたが、チーム数の増加によって他の大学にも選手が進学するようになり、平成国際大学、大阪体育大学などが力をつけているのだ。

台風の目となるか? 環太平洋大学。前列中央が大倉監督

 特にここ数年、優れた選手がコンスタントに進学するようになった平成国際大学が尚美学園大学と肩を並べるようになっており、現在は尚美学園大学と平成国際大学の2強時代といっていい。
 女子専用グラウンドをもたない平成国際大学や大阪体育大学が実力をつけているのは、指導者たちの熱意によるところも大きいだろう。

 今年の注目点は創部2年目を迎えた環太平洋大学の実力だ。女子野球日本代表監督を何度も務めた大倉孝一さんが率いるだけに、勧誘をしなくても西日本などから優れた選手が集まったといい、このニューフェースが大学選手権でどこまで勝ち上がれるかに注目したい。

 5月には新たな大会が高知県に誕生すると聞く。かつては神村学園しか女子硬式野球の環境がなかった西日本だが、今年は福岡県の折尾愛真高校に野球部が立ち上がるなど、空白地帯が埋まり始めている。その高校生たちを受け入れる環境として、環太平洋大学をはじめとする西日本の大学に期待が集まっている。
大学硬式硬式野球部
<主な大会>
全国大学女子硬式野球大会(10月、愛知県)
ヴィーナスリーグ(4~6月、9~11月、埼玉県)
関西女子硬式野球選手権大会(5~6月、京都府など)
ラッキーリーグ 関西女子硬式野球リーグ(7月、9~11月、大阪府など)
九州女子硬式野球選手権大会(9月、宮崎県)
女子野球ジャパンカップ(11月、開催地は流動的)

高校女子野球界の展望

軟式野球 

 12年夏まで6つあった軟式野球部だが、12年秋に横浜隼人高校(神奈川県)が、14年に村田女子高校(東京都)が硬式に転向したために現在は4チームになっている。

八代白百合学園高校は愛好会から野球部に昇格

 距離が離れているために高校チーム同士が頻繁に交流することは難しいが、地元の一般女子軟式野球クラブや女子中学生チームが高校野球部を温かく迎え入れ、大会や練習試合に招くなどして活動をサポートしている。熱意のある指導者たち(教員)が志をもって指導しているのも心強い。

 熊本県の八代白百合学園高校が地元女子中学生クラブの指導者や保護者の声を受けて、愛好会から野球部に昇格するのがこの春一番うれしいニュースだ。

 減少傾向にある軟式野球部だが、創部を検討している高校もあり、今後に期待だ。

高校軟式野球部
<主な大会>
全日本女子軟式野球学生選手権大会・中高生の部(8月、東京都)
女子軟式野球 関東大会・中高生の部(5~6月、10~11月、東京都)
関西女子野球ジュニアリーグ(4~5月、8~10月、大阪府など)

硬式野球 

 高校硬式野球部は10年に女子プロ野球リーグがスタートして以来、目覚しい勢いで増加している。今年は叡明高校、大阪体育大学浪商高校、県立佐伯高校、折尾愛真高校にチームが誕生する。
 特に注目したいのは室戸高校に次ぐ公立高校、県立佐伯高校のチャレンジだ。公立高校は初めは選手集めに苦労をするようだが、地元の公立高校で野球をやらせたいという保護者のニーズは非常に高いので、粘り強く高校生たちの環境を作っていってほしい。

14年の関西選手権で優勝した京都外大西高校

 全国大会ではここ数年、埼玉栄高校、花咲徳栄高校、蒲田女子高校、駒沢学園女子高校といった古豪に、09年創部の福知山成美高校が加わって優勝争いを繰り広げているが、今年は新しい風が吹くかもしれない。1期生が3年生になる京都外大西高校だ。創部1年目から周囲が驚くような強さを見せ、昨年は1、2年生だけで関西選手権大会で優勝。今年は堂々の全国大会優勝候補だ。

 兵庫県を中心に関西の有望選手が集まっている神戸弘陵学園高校も、創部2年目の今年、上位に食い込む可能性がある。12年秋に軟式から硬式に転向した横浜隼人高校も関東の後期ヴィーナスリーグで準優勝するなど勢いがあり、上位進出が期待できる。

 硬式野球部の創部を目指している高校はまだ他にもあり、その数は今後も増えそうだが、チーム数が増えている分、高校にとっては選手集めに知恵を絞らなければならない時代に入っている。今後はいかに優れた指導者を招き、環境を整えるかが鍵になってくるだろう。
高校硬式野球部
<主な大会>
全国高等学校 女子硬式野球選抜大会(3月、埼玉県)
全国高等学校 女子硬式野球選手権大会(7月、兵庫県)
全国女子硬式野球ユース選手権大会(8月、埼玉県)
ヴィーナスリーグ(4~6月、9~11月、埼玉県)
関西女子硬式野球選手権大会(5~6月、京都府など)
ラッキーリーグ 関西女子硬式野球リーグ(7月、9~11月、大阪府など)
女子野球ジャパンカップ(11月、開催地は流動的)

※写真提供/日本女子体育大学、環太平洋大学、八代白百合学園高校、京都外大西高校

 

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