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学童チーム・大和田スカーレットを訪ねて

女子学童チーム・大和田スカーレットを訪ねて

※2009年に『HIT&RUN』(ベースボール・マガジン社)に掲載されたものを再構成しました。数字は09年当時のものです。

佐藤監督とメンバー(09年)

数少ない小学生クラブチーム 

 小学生の女子野球チームを探していて思うのは、選抜チームは多いのにクラブチームが少ないということだ。男子といっしょのチームから女子だけを抜き出して結成し、目的の大会が終われば解散してしまう選抜チームに比べ、最初から女子だけで結成し、同じ指導者がずっと指導するクラブチームはメリットも多いが、9人集まらなければチームは消滅してしまう。そのせいか以前は関東にいくつもあったクラブチームはほとんど姿を消してしまった。

 ところが千葉県八千代市に元気に活動している女子クラブチームが二つもあった。創部21年目の「大和田スカーレット」と12年目の「勝田ラッキーハニーズ」だ。日本広しといえども小学生の女子クラブチームはこの2つだけだろう。

 5月のある日、その大和田スカーレットを訪ねた。ホームの吉田グラウンドでは赤と白のユニフォームの少女たちが、「こんにちはー」とかわいい声で迎えてくれた。6年生8人、5年生6人、4年生4人、3年生4人の総勢22人である。近くの3つの小学校に通う選手だけでなく、インターネットで女子チームを探して車で1時間かけて通ってくる選手もいるという。

4面ある吉田グラウンドの1つがホームG

「なんで女子だけがいいの?」
 と聞くと、
「男子に色々からかわれるから」
「女のくせにって馬鹿にされるから」
 といっせいに返事が返ってきた。
「じゃ、女子だけでやるのって楽しい?」
「うん、楽しい!」
「野球だーい好き!」
 みんな明るく素直で屈託がない。

 脇でニコニコ見ていた佐藤敏英監督は言う。
「この雰囲気が女子チームのいいところですよねえ。和気あいあいっていうか。
 でも逆にそれが困ったところでもあるんです。負けん気が強くないというか、男子だったら『俺ピッチャーやりたい!』と言うところを『えー私がピッチャー?』っていう感じになるんです。
 技術も体力も男子に負けないのに、気持ちの上で負けるところがある。それを克服するのが課題ですね。だから指導するときはいつも『もっと声出せ』って言っています」
 飯山成一代表も
「5、6年の男子といっしょに練習したら、もっと負けたくないという気持ちが出てくるんじゃないでしょうか」
 とうなずく。

 そもそも大和田スカーレットは88年に少年野球チーム「大和田タイガース」の妹分として誕生した。
「女子が10人ぐらいいたし、4年生以下の大会なら勝てるかもしれないということで作ったそうです」(飯山代表)
 それ以来男女が並び立つ形で活動してきた。だから男女合同練習は可能なのだが、今のところ練習も指導者もチーム運営も独立しているのだという。

4年生以下の男子と試合

 09年現在参加している大会は八つ。千葉県少女大会以外はふつうの少年野球チームが相手だ。公式戦だけで年間約20試合をこなすという。

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 ところで5、6年生がいるのに4年生以下の大会に出てもいいの? 
「八千代市少年野球連盟独自の判断で女子チームは出てもいいことになっているんです。3年から6年まで総動員してやっと1チーム作れる状況が続いていたので、6年生以下の大会ではちょっと勝てないからです。
 市の大会以外は事前に6年生がいるんですけど出てもいいですか? と許可を取ってから出ています」(飯山代表)

 06年には運動神経抜群の6年生が7人もそろっていたので、市の秋季大会2部(4年生以下)で優勝。フェアじゃないという声もあるが、6年生がいることで、優勝しても4年生以下の部の県大会には出場できない。つまり五分五分ということ。

 チーム作りの苦労は、
「やっぱり人集めですね。3年前に優勝したので、そのあとドッと入って今22人いますが、毎年10人ギリギリというところでやってきましたから。
 でも今まで一度も存続の危機に至ったことはないんです。たぶんお母さんたちが一生懸命勧誘してくださっているからでしょう。うちと同じころ、あと二つ女子チームができたんですが、やはり選手不足で解散してしまったことを思うと、ありがたいことです」
 と飯山代表。

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 成長期の女子ならではの心身の悩み相談は? 
「私が男だからでしょうか、一度もありません」
 と佐藤監督。
 女子選手につきもののトイレの悩みは、
「うちには女子専用トイレがありますが、ないグラウンドに行くときは、こっちですませてから行けよと言っています」
 とのことだった。

 これから11月までトーナメント、リーグ戦など、たくさんの試合が子供たちを待っている。女子小学生同士の対戦にこだわると極端に大会が少なくなってしまう女子野球界にあって、地域の少年野球チームに特化し、低学年の部に活躍の場を求めた大和田スカーレットのあり方は、大いに参考になるのではないだろうか。

 がんばれ大和田スカーレット!

画像の説明

●大和田スカーレットが参加する女子大会は女子選手の増加とともに増えているが、10年間にわたって開催された指導者有志の手作り大会「千葉県少女大会」は、2010年でひとまず幕を下ろした。
●小学生の女子クラブチームは千葉県以外にも誕生している。
●大和田スカーレットには「監督は父親の中から選ばれ、娘の卒団と同時に引退」という不文律がある。
●大和田スカーレットOBは八千代市の中学校に女子野球環境がないため、ほとんどがソフトボール部に入るとか。でも中には蒲田女子高校の女子硬式野球部に入って野球を続けている選手もいるそうだ。

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