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木戸克彦

コラム 2020年1月25日

 侍ジャパン女子代表ヘッドコーチに就任。元阪神の司令塔

木戸克彦氏「女子野球にめぐり会えて幸せ」

動画による一次審査には156人が応募。木戸は目薬を指しながら、それを全部見たという。

※この記事は『週刊ベースボール』(ベースボール・マガジン社)2017年12月25日号に掲載されたものです。


「天の声いうんかな、お前、助けてやれと言われているような気がして」
 1985年、阪神ファンを歓喜の渦に巻き込んだ捕手は、かみしめるように言う。
 12月上旬、橘田恵監督率いる第8回女子野球W杯代表選手の選考会。ゼッケンをつけた女子選手が行きかうなか、腕を組み、じっと選手たちのプレーに目を凝らす。

 3年前まで、女子野球のことは何も知らなかった。
「リーグ戦があると聞いても、そんなんできるほど人数いるの? レベルもあるの? いう感じやった」
 だが試合を見て認識が変わった。
「スピードやパワーは男子のようにはいかんけど、技術の高さにびっくりした。何よりも、おお、真剣にやってるんやなと。ほら、この子らも(とグラウンド整備をする高校女子硬式野球部員たちに目をやりながら)、みんな礼儀正しくて一生懸命や。PLにいたころを思い出したよ」
 女子選手たちのひたむきさが、百戦錬磨の野球人の心をつかんだ。

こんなに真剣にやっているんだから、助けてやらんと

 橘田監督が木戸に望んだことは明確だった。
「日本代表はすべてにおいて最高峰でなければならない。自分は内野手出身なので、チームの要であるバッテリーに、高いレベルの野球を教えてほしい」
 木戸は言う。
「チームを勝たせるバッテリーであることが大切や。そのために司令塔である捕手には、一般的なセオリーだけでなく、こんな野球がある、あんな野球もあるということを教えたい。色々な戦術を頭に入れておけば、心の準備もできるやろ」
 もちろんヘッドコーチとして、全選手への目配りも忘れない。
「選手一人ひとりに、その子に合った方法で教えたい。楽しくね。男なら一喝すればすむけど、女子はそうはいかんから」
 にやり、笑った。

 自身の野球人生で女子野球に出会ったことを「運命」と呼ぶ彼は、今や女子野球の立派なサポーターだ。
「実は11月に野球が大好きだった父が亡くなったんですが、父は女子のヘッドコーチになったことを、ごっつ喜んでくれているはずです。
 女子を育てて将来の野球界の発展につなげることも、親や野球、阪神に対する恩返しやと思ってます」
 男・木戸克彦、56歳の純情である。

厳しい指導で知られた木戸氏だが、女子の前では強面もこのとおり

きどかつひこ
(株式会社阪神タイガース 球団本部プロスカウト部長)
1961年2月1日生まれ。大阪府堺市出身。78年、PL学園時代に夏の選手権大会で優勝。法政大学では東京六大学野球リーグで優勝3回、ベストナイン5回。83年、ドラフト1位で阪神に入団し、85年、21年ぶりのリーグ優勝と初の日本一に貢献した。国際大会には高校、大学時代に都合3回出場している。2017年10月、侍ジャパン女子代表ヘッドコーチに就任。

女子野球ワールドカップ
WBSCが2年に一度開催。日本は08年の第3回大会以降5連覇中で、18年8月にフロリダで行われる第8回大会では6連覇に挑む。(注・6連覇達成)

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