西日本の女子野球事情(U18)
西日本の女子野球事情
※2010年に『HIT&RUN』(ベースボール・マガジン社)に掲載された記事を再構成しました。数字は09年当時のものです。
中国地方の熱意ある指導者たち
高校野球の強豪校がズラリと並ぶ西日本。でも高校生以下の女子チームは今までほとんど作られたことがなかった。しかし06年以降、ようやく西日本にも暖かい女子野球の風が吹き、あちこちで若葉が育ち始めている。

その一つは岡山県倉敷市だ。06年に女子選手のお父さんコーチなど指導者有志が集まって、
「女子だって試合に出たいよね」
と倉敷女子選抜(学童)を結成。4年生以下の大会に参加し、翌年からは広島県の福山レディースを誘って広域大会に参加。09年12月には選手を全県から集めて岡山レインボーガールズを結成し、西日本初の女子学童大会「西日本選抜女子学童軟式野球 岡山大会」の開催までこぎつけた。
一方、広島県の福山レディースは、09年から選手の募集範囲を福山市から広島東部(備後地方)に拡大し、名前も「広島東部レディース」に改名。
奥田大作監督は
「東部支部の方々からたくさん励ましの言葉をいただいています」
と地元の歓迎ぶりを教えてくれた。
今後の発展が楽しみな九州、沖縄
08年のワールドカップ日本代表選手を5人も出した九州も負けてはいない。
一番早く、06年に誕生したのが熊本県の小中学生チーム、暴れん坊ガールズだ。
「たまには女の子だけで活動したい」
という声に押されて小学校教員の上坂智さんが熊本市内のチームに呼びかけて結成。将来のクラブチーム化を視野に入れて活発に活動している。
この暴れん坊ガールズと年に1回交流戦を行っているのが、福岡県久留米市の小中学生チーム、福岡・佐賀ベースボールガールズ(09年結成)だ。
「女の子でも野球の面白さを実感し、男の子に勝ちたいという強い気持ちをもった選手が増えています。その思いを実現し、心の支えとなる仲間を作るために結成しました」
と代表の中野満義さんは言う。
中野さんは第7~9期日本代表の中野菜摘選手の父で、女子選手の夢をずっと応援してきた人だ。
さらに09年11月に佐賀県伊万里市に誕生した学童チーム、伊万里B-girlsも見逃せない。
代表の大久保宗典さんは、以前佐賀県に遠征に来ていた大阪の女子学童チームの試合を見て女子チーム結成を思い立ったという。
「将来はクラブチームにできたらいいなと思っています!」
と意欲的だ。
うれしいことに今九州の学童指導者の間で、各県選抜チームによる九州大会が開けないか、という声があがっているという。もし実現したら、九州は一気に女子野球のホットエリアになるだろう。
さて高校軟式野球界にも朗報だ。09年4月、熊本県の八代白百合学園高校に野球チームができたのだ。まだ愛好会であるうえに全員素人とあって、1勝も挙げられない状態だというが、
「力をつけていつか高校軟式の全国大会に出場したい」
と顧問の黒木祥人先生。
全国大会といえば、今西日本で唯一連続出場しているのが08年創部の沖縄尚学高校女子軟式野球部だ。顧問の青木義之先生は
「まだ弱くて出るたびに悔しさを持って帰る状態ですが、卒業生のなかには地元の大学に女子野球部を作りたいという意欲的な者もいて、実現したら沖縄の女子野球はもっと面白くなるんですけどね」
と言う。
ところで九州といえば忘れてならないのが、鹿児島県の神村学園高等部女子硬式野球部だ。97年に日本初の女子硬式チームとして産声をあげて以来、多くの日本代表選手を送り出してきた。
「技術は年々上がっていますし一生懸命さも男子に負けません。これからどんな展開があるか私も楽しみです」
という橋本徳二監督の言葉が頼もしい。
今、女子野球の裾野は大きく広がっている。その発展を担う皆さんに、心からのエールを送りたい。
●九州、沖縄の県軟式野球連盟が代表を送り込むオール九州大会は、2011年に「全日本女子軟式野球九州大会」として実現し、毎夏開催されている。