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規定決定の背景

特集 2016年7月28日

 女子軟式野球をさらに面白く!新規定を検証する

第1部 規定決定の背景と全軟連の方針

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新規定誕生の背景

 7月29日から始まる女子中学生の全国大会を前に、全日本軟式野球連盟が、女子軟式野球の新規定を定めた。

投本間17m、塁間25m、外野フリー(柵越えホームランなし)

 というのがそれだ。数年後には女子が守るべき規定として『競技者必携』に入ることになる。

 4月に全日本軟式野球連盟に、この規定に決まった理由を取材した際、全軟連は以下のように答えた。
「投本間と塁間は、全日本女子軟式野球連盟(以下、全女連)が平成2年から30年近く使ってきた実績のある数字だからです。また外野をフリーとしたのは、全女連と『女子の軟式野球はお楽しみでいいから、ホームランは出なくてもいい』ということになったからです」

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 全軟連はその後、47都道府県の連盟に「これでいいですか?」とアンケートをとり、賛成多数で決まったという。でも、
 
「本当にそんな理由で、女子軟式野球の規定を決めてしまっていいんですか?」

 正直言ってそう思った。野球連盟のみなさん、女子の軟式野球は規定次第でもっともっと面白い競技になると思いますよ! もう一度、その可能性を探ってみませんか?

 私がそう思うのは以下のような理由からだ。
 そもそも今全女連が採用している投本間、塁間は、08年に私が女子野球の取材を始めたとき、指導者や選手の方々から「小さすぎる」という声をたくさん聞いていたものだ。かなり多くの人たちが、「一般と同じサイズでプレーしたい」と言っていた(もちろん、このくらいでいいという声もあった)。

 では技術面から見たらどうだろう。規定ができた30年近く前に比べ、今は野球経験のある女性が急増し、技術も上がっている。とすれば、これをそのまま導入するのが果たして適正なのか…。

 それゆえに、世の中の人には笑われるかもしれないが、私個人で、できる限りの検証をしてみようと決意した。幸い全軟連は、「ご意見があれば耳を傾けます」と言っている。それならやってみるしかない。
 

検証の目的と全軟連の方針

 検証をする目的は、

①現在の女子の体力、技術を踏まえたサイズを探す。
②女子軟式野球をさらに面白くする。

 の2つだ。

 ②は全軟連が軟式野球をスリリングにし、面白くすることを目指しているからだ。

 その背景にあるのが、軟式野球の特徴だ。つまり、軟球は柔らかくてつぶれやすいため、十数年前まで、どんなに優れたバッターでもなかなか飛距離が出せず、ヒットや連打も出にくいために、1-0とか1-1という試合がものすごく多かったからである。そのため、もっと点が入る、スリリングで面白い野球にしようとしたのである。

 その結果、02年に飛ばせるバット「ビヨンドマックス」第1号が発売され、06年からは全軟連が、現在使われているA号、B号、C号などといった軟球への切り替えを決めた。

 当時の全軟連のサイトでは、そのコンセプトを、
「楽しい野球、素直によく飛ぶボール」
 と紹介し、
「従来のものより2バウンド目を抑えて捕球しやすくし、約10%飛距離をアップさせる」とした。要するに硬球に近いボールを導入したのである。

 そして全軟連は来年4月、新たな軟球を導入する。さらに弾みにくく、飛ぶボールだ。詳細は12月のプレスリリースまでわからないが、A号に近い大きさのM号と、C号に近い大きさのJ号の2種類になるという。
 理由はもちろん、より軟式野球を面白くするためだが、全軟連は、
「軟式野球(女子野球をふくむ)を海外に輸出する」
 ことも、その理由の一つに挙げた。
 
「軟式野球をさらに面白くする」「海外にも普及させる」というのが全軟連の方針である以上、女子野球も、

①スリリングで面白い。
②外国の選手にもアピールする。

 野球でなくてはならないだろう。
 そう思ったとき、果たして今度の新規定は、その方針に合っているのだろうか。

女子クラブ野球と大学女子野球のサイズはこうして決まった

 現在、全日本女子軟式野球連盟(以下、全女連。クラブ野球)と、全日本大学女子野球連盟(以下、全大女連)が使っている規定は以下だ。

全女連  投本間17m、塁間25m、ホームランライン74-86-74
全大女連 投本間17m、塁間25m、ホームランライン75-85-75

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 全女連の規定は90年に川越宗重会長が数人のスタッフと決めたもので、全大女連は6年後にそれに合わせている。95年に共催する軟式の頂上決戦「ジャパンカップ」ができたからだ。

 川越会長に投本間や塁間をこのサイズに決めた根拠を聞いたところ、
「女子のサイズは男子の90%ぐらいだろうと考えたからです」
 と言う。しかしその90%に、
「科学的な根拠はありません」
 とのこと。またホームランラインについては、
「両翼は塁間のだいたい3倍、中堅は塁間のだいたい3.5倍としました」
 と言い、今年の春ごろには、
「科学的根拠があるなら、規定は変えてもいいのではないか」
 とも言っていた。

 しかし今回の規定作りに際しては、全女連も全軟連も、どちらも科学的な検証をしなかった。
 その理由を全軟連は、「この数字に関するデータの蓄積がなかったからです」と言ったが、そもそもデータの蓄積がないのが女子野球(軟式硬式とも)なのである。不幸なことに、長い年月マイナー競技として省みられなかったから、研究者がいないのだ。

 でも本当にデータの蓄積はなかったのだろうか。実は数値化はされていないが、経験という名の蓄積はあるのである。このサイズを30年近く使ってきた全女連と全大女連の皆さんの感想だ。それを生かさない手はない。今回の検証ではぜひそれを生かしたい。

 第2部ではその感想(使用感)から、規定を検証してみたいと思う。→ こちら

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