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調査報告

調査報告 2020年12月26日 
 
 女子軟式野球選手の

基本的競技能力・調査報告【まとめ】

●タイトル

フリージャーナリスト 飯沼素子

調査の概要

1.目的

 野球競技能力の基本的な指標となる、50m走、ベースランニング、投球速度、遠投距離、バットスイングスピードの5種目を測定し、女子軟式野球選手の競技能力の特徴を明らかにする。

2.調査対象

 全日本女子軟式野球連盟、全日本大学女子野球連盟(軟式)に所属する選手の中で、本研究内容を理解し、承諾を得た選手。未成年者の場合は保護者または指導者の同意が得られた人を対象とした。
●対象者の概要

 さらに詳しくは「第2章 選手の所属と背景」へ。

3.調査方法

野球経験等のアンケート
質問項目/「調査時の年齢、学年、身長、体重」「野球を始めた年齢」「野球経験年数」「スポーツ歴」「経験したことのあるポジション」「中学時の野球部もしくは野球クラブ経験の有無」「硬式野球経験の有無」
能力測定(5 種目)
①測定種目
◆走力/①50m走、②ベースランニング
◆投力/③投球速度(終速)、④遠投距離
◆打力/⑤バットスイングスピード
②グラウンドサイズ
塁間 27.43m、投本間 18.44m(男子野球で使用している一般サイズ)。
③測定方法、使用機器
④調査期間
第 1 期・2017 年 3~7 月、第 2 期・同年 9 月。

4.研究協力者、参考文献

共同研究者、研究協力者、協力チーム
参考文献

調査結果【まとめ】 

野球経験年数

1、女子野球選手の競技能力は野球経験年数の影響を受けることが明らかになった(年数が長いほうが記録が良い)。特に技術を要する投力と打力でその傾向が強かった。
2、野球初心者をふくむ対象者全体の平均値は、全種目中学生が最も高かった。その要因は、大学生までの野球経験年数は中学生が最も長かったこと、また社会人は他の年代より野球経験年数が長いものの、加齢の影響を受けたために数値が伸びなかったからだと考えられる。

少年野球経験と野球開始年齢

3、少年野球経験がある選手の平均値は、ない選手の平均値より高かった。
 これは少年野球後、長いブランクがあった大学生や社会人でも同じで、学童時代に身につけた野球の感覚や技術は、大人になっても失われないことが明らかになった。
4、少年野球経験者の中でも、4~9歳の「プレ・ゴールデンエイジ」に野球を始めた人のパフォーマンスが高かった。特に5~6歳に開始した人の記録が良く、投力と打力でその傾向が強かった。

身長、体重と記録の相関、種目間の相関

5、スイングスピードは、体重が重い選手のほうが速い傾向があった。
6、走力同士、投力同士は強い正の相関関係にあった(50m走のタイムが速い選手はベースランニングのタイムも速く、投球速度が速い選手は遠投力も高い) 。
7、スイングスピードと投球速度は中程度または強い正の相関があった(スイングスピードが速い選手は投球速度も速い)。
8、中学生から社会人20代まで、遠投距離はどの種目とも中程度または強い相関があった。これは他の種目にはない特徴である。

上位者の特徴

9、5種目総合、種目別とも、上位者は非上位者より野球経験年数が長く、少年野球経験率も高かった。またプレ・ゴールデンエイジ開始者が占める割合が大きかった。
10、特に中学生から大学生の投力の上位者は、少年野球を起点に長く野球を続けた人が多かった。
11、上位者の平均値は対象者全体の平均値とは異なり、50m走、ベースランニング、投球速度は高校生が、遠投距離は大学生が最も良かった(スイングスピードは中学生が最も良かった)。
12、5種目総合の上位者は非上位者より身長が高く、体重が重い傾向があった。ただし種目別上位者は、これとは違う体格の特徴があった。

男女差

13、女子中学生の競技能力は1年生から2年生にかけて大きく向上するが、その後は向上率が下がり、スイングスピードのピークは2年生、ベースランニング、投球速度、遠投距離のピークは3年生だった。
14、中学3年生の種目別男女差は、ベースランニング13.4%、投球速度22.8%、遠投距離30.7%、スイングスピード13.6%で、男子が優位だった。また男女差は一律ではなく、種目によって異なることが明らかになった。
15、中学時代は男女とも遠投力が最も向上する。また男女の向上率で一番大きな差が出たのも遠投力だった。
16、男女差がつく中学時代にあっても、男子と対等な競技能力をもつ女子選手が存在することがわかった。

その他

 本調査は、女子野球選手の基本的競技能力が、「野球経験年数」「少年野球経験」「野球開始年齢」「体重」「加齢」の影響を受けることを明らかにした。また走力、投力、打力の「男女差」が一律ではないことを、具体的な数値とともに明らかにした。
 今後様々な研究機関や野球連盟、企業などが女子野球選手の運動能力について研究を進め、女子の競技規定作りやトレーニング法、外傷や怪我の予防法、女子用の用具や女子ならではの戦術の開発などにつなげてくださることを、心から願っている。

目次

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