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15年4月

京都外大西高校、春の高校生の全国大会で初V!(2015年4月3日)

昨年のJABA子規記念杯と関西選手権、今春の高校生の全国大会と、3つの大会を制覇

 高校女子硬式野球界に新しい風が吹いた。4月1日、「第16回全国高等学校女子硬式野球選抜大会」決勝に進出したのは創部2年目の京都外大西高校と、創部1年目で初出場の神戸弘陵学園高校だった。どちらも関西のニューフェースで、それぞれ準決勝で古豪を破って決勝に進出した(京都外大西vs神村学園3-1、神戸弘陵学園vs駒沢学園女子3-1)。

京都外大西高校の真鍋監督

 2010年に女子プロ野球リーグが始まって以来、次々と創部されてきた高校女子硬式野球部だが、全国大会で準決勝に進んだチームはなく、未だ伝統校強しの感があった。しかし遂にその壁を破るチームが現れたのだ。しかも2つも。

 また両校の監督が男子を甲子園に連れて行った人物であることも注目を集めた。京都外大西の真鍋知尚監督は自身が2回甲子園に出場し、監督としては3回男子を甲子園に連れて行っている。かたや神戸弘陵学園の石原康司監督もコーチや監督として都合5回、男子を甲子園に連れて行っている。

神戸弘陵学園高校の石原監督

 両チームの選手たちも粒ぞろいだ。ボーイズリーグやヤングリーグといった中学硬式リーグで男子に伍してレギュラーを張っていた選手や主将だった選手、大人の女子軟式クラブの全国大会に中学生ながら出場し、優勝した選手、軟式の女子中高生の全国大会出場選手、小学校時代に県代表に選ばれた選手など、地元では有名な軟式や硬式の選手がそろっていた。出身地も京都や兵庫だけでなく、徳島、和歌山、奈良、埼玉など様々だ。


 10時試合開始。京都外大西高校は吉留つむぎ―中村晶のバッテリー、神戸弘陵学園高校は先発・鶴澤めぐみ、捕手・高野エイシア。
 神戸の鶴澤は立ち上がり制球が定まらず、2回表、1死二、三塁の場面で四球を重ね、押し出しで1点献上。しかし神戸はその裏、連打で1点を返して同点に追いつく。

京都外大西は3回に4連打して3点追加

 しかし3回表、京都の打線が爆発。まず先頭打者の二番・松山加奈が左前安打で出塁すると、スチールと三番・大橋未来、四番・辻花菜子の連打で1点追加。さらに五番・中村弥奈のライトオーバーの三塁打で2点を加え、鶴澤をマウンドから引きずりおろす。なおも無死ランナー三塁のチャンス。しかし鶴澤に代わってマウンドに立った神戸のエース・龍田美咲は気迫のピッチングで三者連続三振に切ってとった。ギャラリーからは感嘆の拍手が沸き起こる。
 京都は4回にも1点追加し、5-1。2年生メインの京都に対し、神戸は全員1年生とあって、試合はこのまま京都優勢のまま進むかに見えたが、4回裏、神戸が反撃に出た。

4回裏に反撃に出た神戸弘陵学園

 先頭打者、七番・谷川愛が敵失で出塁すると、石原監督はヒットエンドランのサイン。八番・龍田が左前安打を放って無死一、二塁とし、さらに送りバントで1死二、三塁。続く一番・安達ひなたの打球がファースト方向に転がる間に谷川が本塁に突っ込むと、これを京都の捕手がタッチアウトにできず、神戸が1点返して5-2。
 神戸は四番・川中ももの適時二塁打や敵失などでさらに2点を加えて5-4とし、なおも2死満塁、一打逆転のチャンス。しかし六番打者がライトゴロに倒れ、神戸、無念のチェンジ。
 京都は6回にも敵失に乗じて1点を挙げ、試合を決めた。

1234567
京都外大西01310106
神戸弘陵学園01030004

 最終回、神戸の最後の打者の打球が中堅手のグラブに吸い込まれると、この瞬間を身を乗り出して待っていた京都外大西高校のメンバーが歓声をあげながらグラウンドに飛び出した。創部わずか2年。鮮やかな全国大会優勝だった。

5試合を投げきった吉留投手。昨年の関西選手権でも優勝投手になった 喜びが爆発 メンバーの思いを受け止める中村晶捕手兼主将

 また破れたとはいえ、1年生だけで準優勝をもぎ取った神戸弘陵学園高校の戦いぶりも見事だった。勝敗を分けたのは、1年の経験の差だけだったかもしれない。両チームとも非常によく鍛えられ、また自分の頭で考えてプレーするチームだった。采配も、ホームランがまず出ない女子野球ではよく行われる送りバントの多用が見られず、特に京都外大西高校の、どんどん振ってくる打撃が印象的だった。

1回表、内野安打を放つ駒井莉子主将。神戸は京都の7安打を上回る8安打を打った 龍田投手。決勝で許した安打は2本だけ 神戸の守備の要、高野捕手 

 同じ4月1日、甲子園では福井県の敦賀気比高校が南北海道の東海大第四高校を破って全国の頂点に立った。大観衆の声援を受け、たくさんの報道陣に囲まれる男子高校生の全国大会に比べ、女子高校生の全国大会のなんと質素なことか。しかしその野球にかける情熱や技術は決して男子に劣るものではないことを知っていただきたい。そして甲子園を知る監督たちが女子野球に刺激を与え、新たな歴史を作ってくれることを願っている。

■京都外大西高校 真鍋知尚監督の談話

真鍋知尚監督

 去年の夏のユース選手権大会で負けてから、今のチームの構想を練り、作ってきました。全国優勝は狙ってできるもんじゃないですけど、優勝はずっと意識してきました。選手たちには特に何も声はかけていません。ただふだんどおりにやってくれればと思っていました。

 スタメン9人は今大会、一度も代えていません。エースの吉留も5試合、全部投げきりました。ふだんきつい練習をしているので連投は苦にならないそうです。決勝では苦しい場面がありましたが、球が低めに来ていたのでそのままいかせました。ストライクがとれる、ゲームが作れる投手として信頼しています。ほかの選手たちもみんな期待どおりに成長してくれています。

 女子高校生のレベルは上がっていますね。どのチームも昨年より明らかに実力が上がっていて驚きました。

 石原監督が男子を甲子園に連れて行った監督だということは全然意識しませんでした。選手たちはよくがんばってくれたと思います。

神戸弘陵学園高校 石原康司監督の談話

石原康司監督

 1年生だけで31人いるんですが、控えの選手もふくめて全員が一丸となって戦った。その団結力がここまでこれた理由です。まだまだ力がない中で、一人ひとりが自分の役目をよく果たしてくれました。

 今大会、エースの龍田は球が上ずっていて調子が良くなかったので、初戦は完投させましたが、そのあとは継投策をとりました。ミスをカバーできなかったりと反省点は色々ありますが、京都外大西さんは打力もあり、そのチーム相手によく戦ったと思います。もちろん悔しさはあります。だから選手たちにはその悔しさを忘れずに頂点を狙ってほしいと思っています。

 真鍋監督と男子チームで戦ったことはないんです。私が監督になったとき、真鍋監督はすでに男子野球部の部長になっておられたので。うちの学校は京都なら平安高校とよく練習試合をしていて、京都外大西さんとはあまりご縁がありませんでしたね。だから決勝で対戦することになっても特に意識することはありませんでした。

 女子野球のレベルは高くなっているんじゃないでしょうか。特に関東勢は打力がありますね。女子野球を始める前は、女子は男子に比べてスピード感や筋力が落ちるので、男子と女子の間にレベルの差があると聞いていましたが、実際に始めてみるとそんなことはありませんでした。確かにスピード感などは落ちますが、野球にかける気持ちや技術は男子と変わりません。もっともっと女子野球が盛んになってほしいですね。

開会式

今年から埼玉県加須(かぞ)市で開催されることになった高校生の選抜大会 花咲徳栄高校チア部の皆さんが先導 昨年優勝の蒲田女子高校

昨年秋、正式に軟式から硬式に転向した村田女子高校 公立の星、県立室戸高校 ヴィーナスリーグ準優勝の横浜隼人は1回戦で京都外大西と当たり、3-5で惜敗

徐々に選手を増やしていく方針の履正社 開志学園は昨年準優勝の福知山成美を5-2で破る大金星をあげた 惜しくもベスト4に留まったが、古豪復活を印象づけた神村学園

優勝した京都外大西 元気な行進が好印象だった京都両洋。監督は元男子プロ野球選手 準優勝した神戸弘陵学園 

準決勝で神戸弘陵学園に惜敗した駒沢学園女子 春夏優勝多数の強豪、埼玉栄 神戸弘陵学園とシーソーゲームを繰り広げた作新学院

元女子プロ野球選手が率いる至学館 丹波連合は自分の高校に女子野球部がない人たちのために、高校の連盟が期間限定で結成するチーム 昨年、女子野球W杯が開かれた宮崎からは、日南学園が参加

選抜優勝3回の花咲徳栄 野球経験豊富なバッテリーが引っ張る福井工大附属福井 昨年準優勝の福知山成美

選手宣誓は至学館高校の丹羽優希菜主将が務めた 参加19チームの指導者たち 審判を務めた埼玉県野球連盟の皆さん 

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