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16年10月

遂に誕生! 山陰に初の女子学童大会(2016年10月29日)

 やっと、といったら失礼かもしれないが、鳥取県と島根県が参加する女子児童の山陰大会が、12月4日、鳥取県で開かれることになった。
 山陰はソフトボールがそれほど盛んではなく、女子野球の人気も今ひとつで、これまでなかなか女子野球チームができなかった。コンスタントに活動しているのは一般の女子軟式クラブ「ホワイトエンジェルス」(米子市)だけで、小学生の全国大会「NPBガールズトーナメント」にも参加していない。

 とはいえ決して学童チームがないわけではない。島根県にはかつては「島根キャンディーズ」、現在は松江市軟式野球連盟学童部が運営する「松江市女子選抜」があり、12月の岡山大会に参加している。鳥取県にも13年から秋冬限定で活動する「鳥取Jr女子選抜」(鳥取市)があり、地元の60歳以上のベテランチームや一般の少年野球チームと試合をしてきた。
 ただ残念ながら活動はそれ以上広がらず、両県が連携して山陰の女子野球を盛り上げようという動きもなかった。

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 それが一転して山陰大会開催に至ったのは、この10月、米子市に女子学童チーム「米子シーガールズ」が誕生したことによる。代表で、市の選抜小学生野球大会実行委員会の神山邦寿(かみやまくにとし)会長は、
「チームを立ち上げたのは、保護者や選手から女子だけでやってみたいという声をずっと聞いていたのと、鳥取市や松江市の女子チームに刺激されたからです。もちろん女の子の全国大会があることも知っていたので、将来的に全国大会に行きたいという思いもありました。
 大会を作ることにしたのは、松江市軟式野球連盟学童部の松本朗さんと以前からお付き合いがあったからです。『うちも女子チームを作るから練習試合をしようよ』と声をかけたところ、快諾いただき、それでは鳥取市のチームも誘って大会にしよう、ということになったのです」

 鳥取Jrの生みの親、鳥取ジュニアベースボールリーグの岸野仁事務局長は、
「女の子の全国大会の記事を野球雑誌で読み、鳥取市の女子選手たちにも試合をする機会を作ってあげようと思って、13年にチームを作りました。今度初めて女子チームと試合ができるので楽しみにしています。これをきっかけに女子選手が意欲をもって野球に取り組み、中学以降も野球を続けてくれれば」
 と大会を歓迎する。

 松江市の松本さんも、
「今出雲市の選手も一緒に活動しているので、人数は3年生から6年生まで合わせると32人になります。ですから2チーム作って参加します」
 と、大会が楽しみでならないようだ。

 山陰の女子学童選手にとってこの大会が目標となるのは確実で、この流れが、NPBガールズトーナメントへの出場につながる可能性がある。他県の例を見るまでもなく、まず小学生、続いて中学生や高校生の環境作りが始まることが多いだけに、これをきっかけに山陰の女子野球に一気に火がつきそうだ。

 大会をサポートするのは前述した「ホワイトエンジェルス」だ。創部以来20年間、山陰唯一の大人の女子野球チームとして孤軍奮闘してきただけに、彼らにとっても大会誕生はうれしいニュースだ。

 記念すべき第1回大会は、米子市の淀江球場で、午前9時プレーボール!


北陸勢初の快挙! ダラーズが軟式日本一に(2016年10月8日)

歴史に名を刻んだダラーズ。後列右端が吉田監督

 10月2日(日)、東京都江戸川区で行われた「第22回ジャパンカップ 女子軟式野球王座決定戦」で、ダラーズ(石川県)が日本体育大学を9-4で破って軟式日本一に輝いた。

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 同大会はクラブチャンピオンと大学チャンピオンが戦う頂上決戦で、創設は95年。その長い歴史の中で北陸勢が決勝に進出するのは、01年(第7回大会)の金沢学院大学・短期大学(石川県)以来15年ぶり。しかも優勝は初めてのことで、その喜びはひとしおだ。

 今大会でもう一つ注目を集めたのは、外野に初めてフェンスが設置されたことだ。全日本女子軟式野球連盟と全日本大学女子野球連盟が話し合い、「柵越えホームランが出るようにしよう」ということで、全女連の規定の両翼74m、中堅86mで設置された。

全女連と全大女連のホームランサイズは異なるが、今回は全女連サイズでフェンスが設置された

 近年、選手の打力が上がっており、また今夏の女子中学生の全国大会ではランニングホームランが18本も出たことを思えば、設置は時代の要請といってもいい。

 王座決定戦の前に行われた全女連関東選抜と大学選抜の親善試合でも、「誰が最初に柵越えホームランを打つか」で盛り上がったといい、2つの女子軟式野球連盟が柵越えホームランの必要性に目を向け始めたのはうれしい限りだ。

 さて試合だが、日体大は4年連続14回目の出場で、昨年3年生投手として先発し、相手をわずか2安打に抑えた羽鳥奈央(4年)が今年も先発のマウンドへ。他にも昨年の経験者4人が先発して大学勢初の連覇を狙う。

2年間エースとしてチームを牽引してきた羽鳥選手 四死球ゼロという見事な内容で完投した坂下選手

 ダラーズは女子野球日本代表経験のある坂下翠と松本彩乃のベテランバッテリーを柱に、中堅と若手がバランスよく交ざった15人で、初の日本一を目指す。

 1回表、昨年3打数2安打と活躍した日体大の三井彩音(3年)がレフトオーバーの二塁打で出塁し、敵失に乗じて一気にホームを襲い、1点先制。
 しかし今年、日体大の羽鳥は今一つ制球が定まらず、3回裏に連続四球を与えると、宮野雅子に適時打を許し、1-1。

レフトフェンス直撃弾を放った日体大の内海選手。昨年の桜木選手といい、日体大の捕手は強打者ぞろい

 その羽鳥を打線が援護し、4回表、二番・三井が左前安打で出塁すると、三番・内海類流子(2年)のレフトフェンス直撃弾と、四番・高原まどか(4年)の二塁打で2点、さらに敵失で1点を加え、4-1とダラーズを突き放す。ダラーズは大舞台に緊張したのか小さなミスが目立ち、思うようにアウトがとれない。

 これで流れは日体大に傾いたかに見えたが、5回裏、ダラーズが反撃に出た。九番・井口麻未が四球で出塁すると、一、二番が連打し、無死満塁。続く三番・坂下が期待に応えてフェンスに迫る二塁打を放ち、3-4。さらにワイルドピッチで同点に追いつく。苦しむ羽鳥にメンバーが駆け寄るが、日体大の西尾高広監督(同大4年)はじっと我慢。

5回裏、4点目のホームを踏む宮野選手

 羽鳥は1死を奪うも、続く打者にも2連続四球を与え、1死満塁。このチャンスに、中学2年の今崎茜里が中前打を打ち、勝負強さを見せつける。
 ダラーズはイニング最初こそ送りバントを試みるが、途中から打撃に転じ、この回打者13人の猛攻で8点を挙げ、試合を決めた。

 MVPには4打数3安打と大活躍したダラーズの宮野主将が、敢闘賞には日体大の田中茉結主将(4年)が選ばれた。

応援団に向かって胴上げをするダラーズ

 閉会式で国旗貢納のとき、ダラーズの選手がみな軟式日本一になった喜びと誇りを込めて、大きな声で君が代を歌っていたのが印象的だった。

 ダラーズの吉田典宏監督は、
「ジャパンカップは実力より、いかに雰囲気を作るかのほうが大切だと言われていたのですが、そのとおりでした。初回にミスで1点与えてしまったのですが、そのあと選手たちが思いきったバッティングで嫌なムードを変え、流れを作ってくれました」
 と晴れ晴れとした笑顔で語った。

 そのムードメーカーが、MVPを取った宮野主将だ。時には冗談を言ってメンバーの緊張を解き、5回には送りバントを失敗するも、ヒッティングに切り換えて2打点を挙げた。

ソフトボール歴が長かった宮野主将

「劣勢の時は『取り返すぞ。まだまだいける』と声をかけ続けました。みんな諦めずに声を出していたのが勝因です。MVPもみんなが取ったものだと思っています」(宮野主将)

 16年前にダラーズを作った坂下選手(37歳)は、
「どんな大会も決勝はいつも完投ですが、プレッシャーは?」
 という質問に、
「全くないです」
 と頬をゆるめつつ、
「うちのチームカラーはバッティングなんです。趣味でやっているんですから気持ちよく打たなきゃ面白くないでしょ。日本一になれてとてもうれしいですけど、来年ももうひとがんばりしなくちゃと思っています」
 と答えてくれた。

女子野球界のレジェンドの一人、松本選手

 最後は坂下選手の金沢学院大学時代の先輩で、大倉孝一監督のもとで女子野球日本代表チームのコーチもしたことがある松本彩乃さん(40歳)からひと言。
「素直にうれしいです。第1回、2回のジャパンカップに出場したものの、オール兵庫に負けて日本一になれなかったので。今回勝って、社会人チームが強い理由がわかりました。大学生には勢いがあるけど、社会人にはビハインドの時でも盛り返す強さがあるんです」
 長い時間積み重ねてきた思いと経験があるからだろうか。

 これでクラブと大学の勝敗は16勝6敗になった。来年は果たしてどちらが勝つのだろうか。

いつもたくさんのOGや男子、保護者が応援に来る日体大 こちらは石川県から駆けつけた熱烈応援団 スコアボード。審判は東京都軟式野球連盟審判部のみなさん

※松本選手と坂下選手の関連記事はこちら → 女子野球の底辺を広げていったOGたちの物語
※集合写真提供/ダラーズ


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