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16年6月

続々参加! 小学生と中学生の全国大会、エントリー状況(2016年6月2日)

 全日本軟式野球連盟(以下、全軟連)が主催する小学生の全国大会「NPBガールズトーナメント2016」(第4回大会)と、中学生の全国大会「第1回全日本中学女子軟式野球大会」の、参加申し込み状況が見えてきたのでご紹介しよう。中学生のほうはほぼ確定したが、小学生のほうはまだ途中経過のため、今後変更になる可能性があることをご了承いただきたい。

 ではまず新設される中学生大会のほうから。

■全日本中学女子軟式野球大会(京都府開催。7月29日~8月1日)

 当初の予想(28チーム)をはるかに上回る36都道府県がエントリーし、想定外の人気に開催地(京都)が受け入れ態勢を作れなかったのだろう、5月上旬に申し込みをした島根県と香川県の2県が参加を断られている。

 これほど参加数が増えた理由は、小学生のとき全国大会(NPBガールズトーナメント)を経験した選手や保護者たちが、中学でも全国大会に出たいといって動いたことが大きい。加えて中学生になると体力的に男子に負けてレギュラーをとりにくくなるため、女子だけの大会を目指したかったこともあるだろう。

説明

 とはいえ、今後も参加チームがどんどん増えるかは不透明だ。

 左図はここ15年の中学野球部員の数をグラフ化したものだが、男子が激減しているのに比べ、女子は右肩上がり(男子と女子で目盛りの単位が違うので注意)。昨年からこの中学生大会の情報が流れていたからか、今年は遂に女子の数は2000人の大台に乗り、3000人に迫ろうとしている。

 しかしこれだけ男子部員が減ってくると女子部員がチームに不可欠となり、女子大会に選手を取られると困るというところが出てくるだろう。その結果、女子選手が女子大会に出られないという状況になりかねない。これは今NPBガールズトーナメントで起きていることで、中体連や連盟の皆さんには、こうした状況を頭に入れたうえで、女子が女子大会に出られるようにスケジュールを組んでいただきたいと思う。 

 一方、野球部ではなく通年活動する女子中学生クラブの数もうなぎ上りだ(08年は5チーム、16年5月現在43チーム)。今後通年でなくても一定期間活動しているチームや、今回できたばかりのチームもクラブチーム化することが予想され、遠からず、各県1チームは女子中学生クラブがあるという時代が来るのではないだろうか。

■エントリー状況■

説明

 北海道   
 昨年NPBガールズトーナメント(以下、NPBガールズ)に出場した「札幌ダイヤモンドガールズ」の選手たちが、この大会への出場を目指して全日本女子軟式野球連盟(以下、全女連)の一般クラブ「札幌シェールズ」に入団。チームは「札幌シェールズジュニア」を立ち上げて、日本代表経験者の竹中揚子監督が指導にあたっている。 

 また第1回NPBガールズに出場した「オホーツクブルーエンジェルス」の上野和幸監督が遠軽(えんがる)地方の選手と、12月に行われている小学生の岡山大会参加チーム「北海道スノーホワイト」の選手たちを集めて「オホーツクシャイニングガールズ」を結成。6月末の予選で勝ったほうが全国大会に出場予定だ。

 東北    
 NPBガールズトーナメントでは出足が鈍かった東北が、中学生大会では全国大会出場メンバーを中心にチームを作って参加を目指しているケースが目立つ(青森、岩手、宮城。詳しくは情報広場5月1日の記事参照)。今年はチーム編成できなかった山形県も、来年は参加予定だ。
 
 宮城県は2つあるクラブチームのうち、宮城ドリームガールズが出場を辞退したため、今年は宮城デイジーズが出場することになった。

 関東    
 女子野球の環境作りが日本一進んでいる東京都が、6月に第2回都大会を開いて全国大会出場チームを決める。

 また女子野球に熱心な中学校教員が多い神奈川県は、連盟と中体連の先生方が協力して通年活動する「神奈川やまゆりクラブ」を結成。連盟のチームではあるものの先生方が指導者を務めるというスタイルで、野球部員やそれ以外の競技に流れてしまった選手たちなどを集めて活動している(詳しくは情報広場15年11月の記事参照)。非常に意欲的な試みなので、全国のみなさんにはぜひチームのホームページをのぞいていただきたい。

 千葉県には教員が率いる中学野球部チームと全女連のクラブチームがあるが、今回は野球部チームが時期的に女子大会のために集まるのが難しいという理由で参加を辞退。その結果、全女連のクラブ「千葉マリンスターズヤング」が出場することになった。

 茨城県、埼玉県、山梨県、群馬県は今までどおり中学校の先生方が中心になってチームを編成し、それを連盟が承認。栃木県は連盟が中学校の先生方に挨拶をして野球部員を集め、大会参加のためだけの選抜チームを作っている。

 北陸    
 新潟県では連盟の依頼を受けて中学校教員が野球部員や他の競技の選手を集めてチームを作り、石川県は同じく連盟の依頼を受けた先生が野球部員やNPBガールズでベスト8に入った「輝プリンセス」OGを集めてチームを作っている。
 小学生のほうでは未だ出場がかなわない福井県は、中学生の大会では10年から活動している全女連のクラブ「ダイヤモンドガールズ」が晴れて出場する。

 長野県は15年から活動している中学校教員による野球部チーム「長野クラブ」が出場。
 岐阜県では小学生の代表チームを編成している県軟連美濃加茂支部が中心になって、「岐阜エンジェルス」を結成。20人中15人がNPBガールズ出場選手だ。

 東海    
 愛知県軟連は3つある中学生クラブのうち、予選をせずに「イチノミヤドリームガールズ」に代表権を与えている。

 三重県には中学校の先生が作っている野球部チーム「三重アイリス」と、NPBガールズに出場した選手中心の「三重高虎ガールズ中学部」があるが、話し合いの結果、今年は三重アイリスが出場することになった。

 近畿    
 近畿には中学野球部チームがないため、連盟がチームを作るか全女連のクラブチームが出場することになるが、大阪府と兵庫県は今年は連盟チームを作らず、全女連のクラブチームを出場させる。ただし府(県)連盟に加盟することを条件にしたため(女子だけの特例で二重登録とはみなさない)、全女連のクラブ「野田ファイターズレディース」と「オール兵庫ジュニア」は府や県の連盟に登録した。

 滋賀県は全女連のクラブ「滋賀マイティーエンジェルス」が出場する。
 また全女連のチームがない奈良県は連盟が中体連に挨拶をして野球部員を中心にチームを編成。開催地の京都は2チーム出場できるために、連盟がホームページで参加者を募ってチームを作った。

 中国    
 NPBガールズに参加できていない岡山県が、中学生では参加できるのが朗報だ。出場するのは全女連のクラブ「岡山スカイマーメイド」。

 広島県は一度エントリーしたが、5月末に出場を断念した。全女連のクラブ「広島レディース」が夏に開催される全女連の全国大会のほうに出場すること、それ以外の選手(たとえばNPBガールズOG)では人数が集まらなかったためだ。
 残念ながら島根県は5月初めに出場を申し込んだが、参加はかなわなかった。

 四国    
 香川県を除く全県が参加する。特に徳島県はNPBガールズ参加メンバーをそろえて、中学でも優勝を狙う。チーム名は「阿波娘ベースボールスピリッツ」。子どもたちによる命名だ。
 高知県は連盟が中心になって小学生の代表チーム「高知家ガールズ」OGを集めて練習を重ねている。最終的には連盟役員でもある中学校の先生に監督を依頼する予定だ。

 香川県は全女連のクラブ「香川オリーブガールズJHC」が連盟の推薦を受けて5月初めに参加を申し込んだが、島根県同様、受付が終了しているということで参加できなかった。

 九州沖縄  
 11年から小中学生の九州大会が開かれているため、チーム作りはスムーズで、例年各県の連盟が中体連に挨拶をして、野球部員を中心とした短期チームを作っている。

 特筆すべきは大分県が小中通して初めて全国大会に参加することだ。県軟連別府支部が運営する「オール大分ガールズ」がそれで、昨年九州大会・小学生の部で優勝した子どもたちも参加する。

 沖縄県は小学生同様、県野球連盟から女子チームの編成を任されている仲本裕樹さん(野球っ子応援会)が、今年は「女子野球チャレンジ」というイベントを行って、小中とも全国大会参加希望者を募った。

■参加資格や新しいグラウンドサイズなどについて■

説明

 女子中学生の野球環境には主に「全日本女子軟式野球連盟」「47都道府県の野球連盟」「中体連(軟式野球競技部)」の3つが関わっているが、代表チームの選出方法はそれぞれの県の状況に応じて大きく5つのパターンに分かれるようだ。

①連盟が中体連に「こういう大会があるので選手をお借りしたい」と挨拶して、連盟主導でチームを作るパターン。先生方は静観の構えだ。しかし、なかには先生方が監督になる場合もある。(栃木、岐阜、奈良、京都、高知、九州5県)

②全日本女子軟式野球連盟のクラブチームが出場するパターン。(千葉、福井、滋賀、大阪、兵庫、岡山、愛媛)

③熱心な中学校の先生方がチームを作って連盟の推薦を受ける、あるいは連盟の依頼を受けた先生方が中心になってチームを作るパターン。(埼玉、茨城、群馬、神奈川、山梨、長野、新潟、石川、三重)

④有志がチームを作り、連盟の承認を受けるパターン(青森、沖縄)

⑤予選を行って優勝チームを出場させるパターン(北海道、岩手、東京)

 エントリーはしたものの、まだチーム作りができていないところがあるので最終的なものではないが、だいたい上記のような感じで進んでいる。

 しかし参加を決めた府県も、代表チームが決まるまでには混乱に次ぐ混乱があった。なぜなら参加資格の詳細が現場に周知されていなかったり、世間一般的に知名度の低い全女連のクラブチームが不利益をこうむったりしたからだ。

 たとえば全女連のクラブチームが「県軟連に加盟していないから出場させない」と断られたり、全女連のクラブと中学野球部を兼部している選手が、「二重登録になるからどちらかを退部するように」と言われたケースなど。

 そこで4月初めに全軟連の宗像豊巳専務理事に参加資格について確認をとったので、以下にご紹介しよう。

「大会を開催する目的は女子中学生の野球環境を広げることなので、女子に限り参加資格を厳しくすることはしません(硬式に加盟したり試合に出場している選手は不可)。
 ですから全軟連としては、たとえば中学野球部と全日本女子軟式野球連盟のクラブチームの両方に所属していても出場を認めます(二重登録とはみなさない)。また各地の連盟に加盟していない全女連や有志のチームなども出場可能ですし、環境がなくて他の競技に流れてしまった選手でも出場を認めています」
 
 そのほかのトラブルとして、地域の連盟による特定のチームのえこひいきや、イジメとも受け取れる対応も聞いており、非常に残念だ。大人の身勝手で子どもたちから出場のチャンスを奪ってはならない。当たり前のことだが、全軟連はもちろん、各地の野球連盟、全女連、中体連がきちんと傘下の組織やチームに情報を伝達すること、そしてフェアプレー精神で臨むことを望んでいる。
 
 さてこの大会では中学野球部(一般)とは異なる女子用の規定を設けることになった。「投本間17m、塁間25mで、外野にカラーコーンやフェンスを置くことはせずにフリーとする」というものだ。

 投本間と塁間は約30年前から全女連が使っているサイズだが、全女連には両翼74m、中堅86mというホームランラインがある。しかし今回はこのホームランラインは採用しなかった。これによって小学生の大会では出たホームランがまず出なくなり、ランニングホームランオンリーになるだろう。
 
 全軟連はグラウンドサイズやホームランラインがないことについて、今後、提言があれば耳を傾けるという。

 女子の規定は大きな問題なので、後日改めて特集ページで記事にし、閲覧者のみなさんと一緒に考えていきたいと思っている。

※参考記事…特集「中学生の軟式野球は今

■NPBガールズトーナメント(埼玉県開催。8月6日~11日)

 第1回大会から参加していた広島県が、今年は人数が集まらずに出場を断念。また昨年は県内の大会と重なって出場しなかった高知県が、今年も同じ理由で不参加を決めた。 
 この2県が参加しないと、中国四国地方の地図が寂しくなる。全体的な傾向として東高西低になりつつあるようだ。

説明

 年々少子化が進むなか、女子の大会に選手をとられると本来所属している少年野球チームが成り立たなくなるケースが増えており、秋田県、福井県、香川県がその理由で第1回大会から出場していない。
 岡山県と鳥取県、鹿児島県は、参加までにあと一歩というところだろうか。近隣の連盟や指導者のみなさんは、ぜひこの3県の人たちの背中を押してあげてほしい。

 その一方で今年出場に向けて動いたのが長野県と島根県、大分県の3県だ。なかでも長野県はエントリーまでしたが、現在のところ選手集めに苦労している。初の大会参加に向け、県野球連盟の積極的な後押しがほしいところだ。

 そのほかの島根県、大分県は、結局、経済的な理由や人数が集まらないなどの理由でエントリーできなかった。
 
 今のところ36都道府県が参加予定で、これに開催地(埼玉県)枠の1チームを加えた37チームで開催される予定だ。

 ところで、今年初めて参加チーム数が減ったことにお気づきだろうか。13年に29都道府県でスタートして以来、14年は35、15年は37と順調に参加数を増やしてきたが、今年は36都道府県である。もし長野県がキャンセルすると、さらに数が減ることになる。

 冒頭で述べた少子化による影響が大きいが、各地の指導者に話を聞くと、開会式が東京ドームでなくなったことや、監督会議や式の開始時間が夕方から朝になったことを改善点に挙げる人が多かった。
 
 この大会は日本の女子野球の底辺を支える大事な大会だ。色々な課題があって大変だと思うが、全軟連には開催地・埼玉県と相談して、ぜひ参加しやすい、魅力ある大会作りをしていただきたいと思う。

※最終的に参加したのは33都道府県35チームだった。第1回大会から参加していた岩手県、滋賀県、長崎県が参加をとりやめ、長野県も参加を断念。逆に兵庫県は初出場を果たした。


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