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特集 ★2012年11月29日
第5回女子野球ワールドカップを振り返る
祝3連覇! JAPAN戦士 それぞれの思い
INDEX
清水稔コーチ 志村亜貴子主将 中島梨紗副主将 新井純子選手 磯崎由加里選手 大山唯選手 萱野未久選手 川端友紀選手 小西美加選手 金由起子選手 里綾実選手 新宮有依選手 田中幸夏選手 出口彩香選手 直井友紀選手 中野菜摘選手 中村茜選手 西朝美選手 三浦伊織選手 吉井萌美選手 六角彩子選手
※( )内は大会参加当時の所属チーム
3連覇して、うれしいというよりホッとした
新谷博監督
この大会は途中からプロが入ってきたことで、当初考えていたメンバーとは替わったこと、またプロとアマチュアということでチームワークが一番心配でしたが、カナダに行ってから次第に結束していったので、心配はなくなりました。
08年の松山大会、10年のベネズエラ大会では投手コーチとしてワールドカップを見、今大会も予選リーグが始まるころから他チームを見に行きましたが、日本の野球は攻守ともにとてもレベルが高いので、浮き足立たずにしっかりやれば勝てると思っていました。
他の国よりワールドカップ出場経験者が多いのではというご指摘をいただきましたが(20人中14人が経験者)、人選で特にそれを意識したことはなく、攻と守を兼ね備えた選手を選んでいったら、自然とそうなったということです。それに経験というのは確かに大切ですが、女子の場合、勢いのほうが大切だと思うんです。その点ベンチの選手もみんなよくがんばって盛り上げてくれたので、良い結果が出せたと思います。
オーダーは清水コーチが中心になって考えてくれました。投手6人のうち左は吉井選手だけでしたが、これからもっと左の良い投手が増え、アンダースローの投手なんかも出てくると面白くなると思います。
2戦目でアメリカに負けてからあとは全試合苦しかったですね。3連覇のためには一つも負けられないと強く思っていたので。平常心を装うのが大変でした(笑)。だから勝った時はうれしいというよりホッとしました。スタッフ、コーチ、選手がダメな監督をよくフォローしてくれたと感謝しています。
代表メンバーに選ばれる人の技術は年々上がり、精神力も強くなっていますが、中高生の皆さんには3連覇したメンバーなんかすぐに超えてやるわ、というくらいの気概と目標をもって精進してほしいですね。
いかにランナーを進め点を取るか。徹底的な練習と細かい指示が奏功
清水稔コーチ
08年の松山大会のときに初めて練習のお手伝いをし、10年のベネズエラ大会からコーチとして参加しています。
投手のオーダーは新谷監督が担当したので、私は打順や守備位置のオーダーを担当しました。具体的には私が選手の調子や流れ、他チームの状況を見て提案し、それをもとに2人で話し合って決定するというスタイルです。女子野球は世界的に見てまだこれからの世界ですから国際大会等が少なく、外国チームの情報は主要選手以外ありませんでしたが、ベネズエラ大会の経験を元にイメージすることができました。
驚いたのは外国のチームが強くなっていたこと。特にアメリカ、カナダ、オーストラリアは「打倒ジャパン」を目標としており、厳しい戦いとなりましたが、どこの国に対してもしっかり自分たちの野球をすれば勝てると思っていました。
コーチとしてはできるだけ細かく指示を出すことを心がけました。たとえば我々日本の野球はつなぐ野球なんですが、セーフティスクイズ、ヒットエンドランなど、どうやってランナーを進めて点を取るか、一つひとつ確認し、選手が納得するまで教えました。また外国人選手の打球は日本人に比べてスピード、飛距離ともに優れているので、特に外野の守備位置についても逐一ベンチから指示を出しました。
実は日本代表が本番さながらの緊迫感をもって国内で試合をする機会は少ないんです。だから予選リーグを最終的なチーム作りの機会ととらえて、失敗や成功を生かしながらチームをまとめていきました。新谷監督が厳しい言葉を投げることもありましたが、それはみんなチーム作りの一環だったんです。こうしたことがすべてうまくいったからこそ、3連覇できたと思っています。
女子野球に関わるようになって選手たちの一生懸命さ、恵まれない環境にあっても貪欲に野球を極めようとする純粋さに心打たれました。大事に野球をやっているなと思います。素晴らしいですね。勝つための方法論は男女一緒ですから、これからも機会があれば女子選手に野球を教えてあげたいと思っています。
プロ選手の意識の高さや
取り組む姿勢に刺激を受けた
志村亜貴子主将(アサヒトラスト)
主将としてのプレッシャーはどこかで感じていたのかもしれませんが、いい選手ばかりだったので、特に何かしなくても大丈夫でした。
私自身はプロアマは意識しないでやっていましたが、プロの人たちは自分たちはプロなんだという意識をもって取り組んでいて、その姿勢や意識の高さに刺激を受けました。
オーストラリアの昔の仲間と対戦。私情を捨ててつかんだ勝利
中島梨紗副主将(侍)
以前の大会では中継ぎや抑えが多かったので、予選リーグのオーストラリア戦で先発を命じられたときには驚きました。しかもオーストラリアでプレーしていたことがあるので、今回のメンバーの大半は昔の仲間。
でも私情を捨て、相手を一バッターとして見てプランを立てた結果、イメージどおりの投球ができました。
史上最強のチームで新谷監督を胴上げできた喜び
新井純子選手(尚美学園大学コーチ)
3連覇のプレッシャーはありましたが、新谷監督を胴上げすることを目標にしていたので、達成できて本当によかったです。
このワールドカップが11回目の国際試合でしたが、今回のチームは今までで一番レベルが高かったですね。そのうえあの過密スケジュールのなか、全員がきちんと調整して力を発揮できたことは素晴らしかったし、それが優勝できた理由だと思います。
実は大会のあと現役を引退し、尚美学園大学のコーチに専念しています。これからは人材の育成というかたちで貢献したいと思っています。
一番うれしかったのはアメリカの主砲を打ち取ったこと
磯崎由加里選手(尚美学園大学)
「MVP」「最多勝利選手」「ベストナイン~先発投手」受賞
思い切り投げて大会を楽しむことを考えてきたので、3連覇できてうれしいです。MVPも取れると思っていなかったのでうれしいです。でも一番うれしかったのはアメリカの主砲・ホームス選手を打ち取れたことです。
(決勝の2回表に死球を出して2死満塁にしてしまったとき)新谷監督に「打ち取る気がないんならやめてくれ(マウンドを下りてくれ)」と喝を入れられて、しっかりしなきゃと思って思い切り投げました。
調整は万全。やるべきことをちゃんとやれた
大山唯選手(尚美学園大学)
ワールドカップには中学生のときから参加していて、今回が4回目です。その経験から、「今調子がいいという自信がなければ大舞台で力が発揮できない」ということを知っています。その点今回は出発前の練習回数が多く、きちんと調整できたことがとてもよかったです。
また試合ではアウェー感に飲まれることがあるのでベンチの盛り上げが重要ですが、その点でも、やるべきことをちゃんとやれたと自負しています。
思いがけず怪我をしたけれど、精一杯プレーできた
萱野未久選手(SIRIUS)
プロが参加する初めての大会とあって最初はお互いに気を遣っていましたが、次第にすごくチームワークが良くなり、金メダル目指して一丸となってやれたと思います。
大会中に接触プレーで怪我をしてしまい、大学時代の監督でもあった新谷監督に「何してんだよ。日本に帰れ」と怒られましたが、この大会に出たくても出られなかった選手がいるのにと本当に自分で自分が情けなかったです。でも早く治さなきゃと思って冷やし続けたので2日後には試合復帰できましたし、自分では精一杯やったと思っています。
3回目のワールドカップでしたが、知っている範囲では今回のチームが最強でした。そのなかでやれたことは勉強になったし、自分自身のレベルアップにもなりました。
幼いころからの夢が実現。
様々な経験を積めた充実した2週間
川端友紀選手(京都アストドリームス)
代表選手に選ばれたときは小さいころからの憧れだったので素直にうれしかった。同時にプロが初めて合同で参加する大会で3連覇がかかっていたのですごいプレッシャーでした。試合などでは私の前の打者(四番の西さん)が敬遠されて、私と勝負のパターンが多かった。初めてのことだったので印象に残っています。
他国の選手と比べて違うと感じたところはパワーや体つき。でも、細かいプレーやピッチャーは日本のほうが優れていると思いました。世界にはすごいバッターがたくさんいました。負けてられないなという思いと3連覇したからといって次回も気は抜けないなと思いました。
ワールドカップで色々な経験をしてアマチュアの選手とも交流できて、すごい充実した2週間でした。2年後も代表選手に選ばれたときは全試合フル出場したい。
自分に対するリベンジを期して参加。しっかり仕事ができた台湾戦
小西美加選手(大阪ブレイビーハニーズ)
出場メンバーに選ばれたときは、やっと自分に対するリベンジができる!と思いました。
印象に残っているのは雨で中断した台湾戦。気温差12℃くらいあってとても寒かったけれど、しっかり投げられたと思います。エドモントンでは毎日選手が食事を作ったり、とても支えあえた大会でした。
外国の選手と日本の選手で違うと感じたところは体の使い方とパワー。自分の見つけた課題は、中継ぎの難しさと、ブルペンでの投げすぎ注意ということ。
プロとして日本代表で戦えたことはとても大きな経験となりました。世界中で女子野球がもっと発展できるように、胸を張ってがんばろうと思います。
ここでなんとかしなきゃという思いが結果につながった
金由起子選手(ホーネッツレディース)
「打点王」受賞
今回はなんでなのかわからないんですが、最初からいつになく緊張していて。3連覇のプレッシャーだったのかもしれません。
今回たくさん打てたのは、みんながいい場面で私に回してくれたから。ここでなんとかしなきゃという気持ちで食らいついていったのがよかったのだと思います。
キッチンの長テーブルを囲んで養ったチームワーク
里綾実選手(福知山成美高校コーチ)
「ベストナイン~救援投手」受賞
今回はホテルではなくて大学の寮が宿舎で、暑かったり食事がパンや肉、長粒米のご飯だったりであまりのどを通らず、快適とは言えないところもありました。でも寮なのでみんなが集まれる長テーブルのあるキッチンがあって、そこでコミュニケーションをとれたのがとてもよかったです。
今回プロが初参加ということでお互いに気を遣って、最初はプロはプロ、アマはアマで固まっていたんですが、日を重ねるにつれて仲良くなり、チームワークよく戦えました。投手陣のチームワークも良く、また個人的にはいつでも投げられるように準備していたので、それが救援投手賞につながったのだと思います。
世界のパワーに触れ、新しい課題も見つかった大会
新宮有依選手(平成国際大学)
3連覇できたことはすごくうれしかったです。でも個人的には打たれてしまって、世界のパワーに負けたという意識があります。技術面もまだまだですね。
世界には西さんみたいなパワーヒッターが何人もいるということがわかって勉強になりましたし、新しい課題も見つかりました。でも参加できてとても楽しかったです。できることなら次のワールドカップにも出たいです。
思いがけなかった代表選出。この経験をプロ生活に生かしたい
田中幸夏選手(兵庫スイングスマイリーズ)
選考対象となった、女子プロ野球選抜チーム対全日本代表チームの試合では、個人的に結果を残すことができなかったので、全然選ばれるとは思っていなくて、ただただビックリという感じでした。
川端友紀選手の代打で初球ヒットを打った打席がとても印象に残っています。パワー、体格の違いを世界大会で感じました。打撃面でいかに1打席で結果を残せるかということが自分の課題だと感じました。
今回、マドンナジャパンの1人として大会に出て、色々な経験が出来ました。しかし、私にとって今大会は満足のいくものではなかったので、この経験をこれからのプロ生活に生かしたいと思います。
先輩たちの気遣いで緊張が取れ、
いつもどおりのプレーができた
出口彩香選手(尚美学園大学)
「ベストナイン~遊撃手」受賞
初めての参加で緊張していたんですが、経験者の先輩方が頻繁に声をかけてくださったので緊張が取れ、いつもどおりのプレーをすることができました。
外国人選手の打球は速いし人工芝だったので慣れるのが大変でしたが、予選リーグの間にうまく対応できるようになりました。
外国の料理は口に合わなかったんですが、キッチンが使えたのでご飯を炊いてお茶漬けやふりかけご飯を食べてリラックスできました。
誰よりも楽しめたワールドカップ。でも悔しい思いも
直井友紀選手(侍)
ふつうは世界の大舞台に立つと緊張してしまうと思うんですが、私はプレッシャーを感じないタイプなので、誰よりもワールドカップを楽しめた気がします。試合中、チャンスで回って来い! 味方が出塁した、やった! なんて思っていました。
でもその分、予選リーグのアメリカ戦で最後に三振してしまったのがすごく悔しかったです。自分が出てランナーを返したいと思っていたし、イメージは完璧にできていて、いい感じで打席に入ったので。
オーストラリア戦ではキャッチャーとしてフル出場しましたが、いつも自分のチームで守っているポジションだったし、ピッチャーが同じチームの中島梨紗さんだったので、満足のいく仕事ができました。
外国人選手についてはタマラ・ホームス選手の筋肉量がハンパじゃなくて驚きました。日本では見たことがないくらいすごかったです。タマラ選手の打撃を目標にがんばりたいと思います。
外国人がまねできない小技を磨いて臨んだ大会
中野菜摘選手(尚美学園大学)
試合中は全力でプレーしていたので、その分充実していたし、満足のいく戦いができました。
以前の大会で外国人選手との身体能力の差を感じていたので、日本にいるときから外国人ができない小技を磨くようにしていました。
思い出に残るカナダ戦の三塁打。自分らしいバッティングができた
中村茜選手(兵庫スイングスマイリーズ)
選ばれたときは驚きと喜びと半々な気持ちでしたが、喜びのほうが大きかったです。選ばれたからには責任をもって自分の力を充分に発揮して後悔の残らないようにがんばろうと思いました。
思い出に残っているのは、カナダ戦と決勝戦です。カナダ戦のセンターオーバーの3ベースヒットはワールドカップ初の長打で、やっと自分らしいバッティングができました。決勝戦は気の抜けない緊迫した雰囲気の中での試合で、チーム全体が一つになって戦った試合でした。
日本人と比べて外国選手の体格は大きかったですが、体格は関係ないと結果で証明できていると思います。日本はそんなに大きい選手がそろっていないですが、世界を相手に勝てたのは、細かい野球をしたからだと思います。バントできっちりとランナーを送ったり、先の塁を狙った走塁をして相手の隙をつく野球、逆に隙を作らない野球をしました。なんといっても投手力の安定が守備のリズムを作り、色々な試合を最小失点で抑えることができた理由だと思っています。
逆に戦ってみて力の差を感じました。少し力のあるピッチャーを相手にすると差し込まれて、力負けしていることがあったので、パワーをつけていきたいなと思います。
世界の舞台で自分の力を試すいい経験ができました。この経験をこれからの野球人生に生かして、もっともっと上のレベルを目指していきたい。次もメンバーに入れるように日々努力していきたいと思います。
3連覇は意識せず。
捕手としてしっかり投手を把握し、大会に臨めた
西朝美選手(アサヒトラスト)
3連覇は特に意識しませんでした。一番プレッシャーを感じていたのは新谷さんでした。前の2大会も一緒だったので、緊張しているのが表情からわかりました。
捕手としては投手全員とコミュニケーションをとって、大会前の練習では癖や性格などを、大会では体調を把握したうえで臨めました。今回は日本にいるときに充分練習することができたので、それがよかったと思います。
残念だったのはアメリカ人のライバル、主砲・ホームス選手にバッティングで完敗したことです。
オランダ戦でヒットを打ち、波に乗れた
三浦伊織選手(京都アストドリームス)
「ベストナイン~外野手」
昔から夢だった日本代表になることができたのでうれしかったです。1試合目のオランダ戦の1打席目でヒットを打ち、自分自身波に乗れたことはとても印象に残っています。
外国人はパワーバッティングで、打線に火がつくと長打が多くて、日本はバントなどの小技や守り抜く野球をしていると感じました。
ワールドカップの経験を生かして、外野の守備についたとき、もっと相手のバッティングの特徴(バットの出しかた、当たり方、タイミング)を見て守備位置を考えられるようにしたいです。
世界の舞台で戦うことができ、しかも3連覇することができて、自分の野球人生にすごい貴重な経験ができました。これからも女子野球のためにがんばります。
外国とのパワーの差を実感。でも守備は日本が世界一
吉井萌美選手(平成国際大学)
初めての日本代表でしたが、とても楽しかったです。守備は日本が一番うまいと思いましたが、パワーについてはアメリカやカナダといった強豪チームとの力の差を感じました。
投手としてはいつ「行け」と言われても大丈夫なように準備をしていたので、ジャパンとしての役割をきちんと果たせたと思っています。
仲間たちと目標だった3連覇を達成できてうれしい
六角彩子選手(侍)
「最優秀守備選手」受賞
3連覇目指してずっとやってきたのでうれしいです。仲の良いチームだったので、毎回楽しい試合でした。
プレッシャーをあまり感じないタイプなので、特に気負うこともなく楽しめました。