女子野球情報サイト 

yarunakannsai

特集 2013年7月3日

やるな関西! 軟式と硬式、夢のコラボ大会実現

開会式が終わると軟式と硬式の選手たちが入り乱れ…。右は兵庫県のマスコット「はばタン」

関西パワーが牽引する軟式と硬式の融合

23日、あじさいスタジアムにて

 関西の人は本当にエネルギッシュだ。「それ、ええんちゃうん」と衆議一決するや、障害も苦労もなんのその、信念をもって走り出す。人生を楽しむことのうまさにかけては、ちょっと関西の人の右に出るものはないのではないだろうか。

 6月23日と30日に行われた女子野球界初のイベント、軟式と硬式の女子野球チームによる「関西女子野球親睦大会」も、そんな皆さんだったからこそできたことだと思う。

 この大会、「関西から元気発信」をスローガンにする関西女子野球連盟(軟式です)が企画、実行。

大会要綱

 左図のように関西の中学生から高校、大学、社会人までの軟式硬式の代表チームが一堂に会し、お互いの試合を披露し合うという内容になっている。その顔ぶれの多様さは、思わず「関西女子野球の見本市」と言いたくなるほど。

 でもこの大会のすごさはそんなところにあるのではない。女子軟式野球と硬式野球の共存と協力、言い換えれば「これからの女子野球界は軟式と硬式が協力して作っていきましょう」ということをテーマにしているところにある。

 第1回となる今回は、まずはお互いの競技の特性やチームのあり方を理解するということで、観戦をメインに企画された。当初は親睦という意味で、軟式と硬式の選手がKボールを使って試合をする案も浮かんだが、ボールの違いなどから、たとえ単発のイベントでもケガ人が出てはいけないということで見送られた。

男子野球界で整った軟式と硬式の協力体制

 軟式と硬式の共存、協力? なにそれ、と思う方も多いだろう。しかし実は男子野球界はすでにその方向に舵を切っている。ご存知の方もいると思うが、この4月、軟式と硬式に分かれていたアマチュア野球界が、一つの組織のもとで運営されることになったのだ。

 以下の新組織図をご覧いただきたい。今まで硬式の団体を束ねていた全日本アマチュア野球連盟が全日本野球協会と改称し、そのなかに全日本軟式野球連盟が加盟している。

全日本野球協会
 ●硬式 日本野球連盟(社会人、中学硬式リーグなど)
 ●硬式 日本学生野球協会(日本高等学校野球連盟、全日本大学野球連盟)
 ●軟式 全日本軟式野球連盟
 ●野球規則委員会

 目的は、「アマチュアの主たる3団体が連携協力し、選手強化や国際大会に出場する指導者や審判員の育成の一貫化を図る」ことだという。
 選手の強化育成に関しては、サッカーなどに競技人口を奪われている今、軟式硬式が力を合わせて考えていかなくてはならない、ということらしい。

 日本女子野球協会を除き、既存の野球組織に属していない女子野球界でも、昨年ぐらいから軟式と硬式の協力体制の重要さが口にされるようになってきた。
 理由は、少しでも早く小学生から大人までの一貫した野球環境を作らなければならないこと、また世界をリードする選手の育成が求められているからだ。そのためには軟式と硬式の協力が欠かせない。さらに女子の体の特性を踏まえたスポーツ障害対策やトレーニング法の確立、女性審判員の育成、ドーピング対策なども共通の課題となっている。

 今回この親睦大会の後援に全日本女子軟式野球連盟と全日本大学女子野球連盟(軟式)、日本女子野球協会(硬式)がついたのも、こうした背景、認識があったからだ。

 現場レベルでいち早くその重要性を理解し、できることからやってみようと動いた関西女子野球連盟は、「何もかも手探り状態で、何をすればいいのかもよくわかりませんでしたが、幸いにも硬式の皆さんがとても好意的に受け止めてくださり、それに勇気を得て企画を進めることができました」と言う。

 関西女子硬式野球界には元女子野球日本代表で、軟式チーム「オール兵庫」OGでもある京都両洋高校の上田玲コーチ、小学生時代、全女連の小学生大会で活躍し、現在「履正社レクトヴィーナス」の監督を務める橘田恵さんといった軟式硬式双方の女子野球界を知る指導者たちがいて、彼女たちが積極的に調整役を務めてくれたと聞く。

ずらっと並んだ指導者たち。左から履正社の橘田監督、大体大の横井監督、福知山成美の長野監督、京都両洋の上田コーチ、野田レディースの山元監督とコーチの皆さん、マイティーエンジェルスの上野監督とコーチ

 余談ながら関西には日本代表として世界を見てきた女性指導者が多く、上記のお2人のほかに元日本代表であり軟式チーム「大阪ワイルドキャッツ」監督の八木久仁子さん、福知山成美高校監督の長野恵利子さんという人材もいる。
 今回の女子野球界初、否男子をふくめても初の軟式硬式の親睦大会が実現したのは、連盟の努力に加え、こうした関西女子野球界の長く豊かな歴史があったからだろう。

いよいよ始まった軟式と硬式の交流

ちょうどアジサイの花が見ごろ

 23日、朝8時前。文字どおりアジサイの花が咲き誇るあじさいスタジアム(神戸市)では、すでに関西女子野球連盟の皆さんが粛々と準備を進めていた。
 受付、グラウンド整備、お祭り気分を盛り上げるための着ぐるみの搬入、アナウンス担当者の出迎え等々。

 バスを仕立てて次々に到着するのは履正社レクトヴィーナス(硬式)、大阪体育大学(硬式)、福知山成美高校(硬式)、京都両洋高校(硬式)、滋賀マイティーエンジェルス(軟式)、野田ファイターズレディース(軟式)。
 うわあ、ふだんは絶対一緒に見ることができないチームが同じ場所にいる、とめまいがする思いだったが、こんな素敵なミスマッチなら何度でも経験したい!

上野監督

 朝5時半集合で参加したマイティーエンジェルスの上野竜也監督は、「いやあ、もう連盟の方が熱心で熱心で。あの熱意を見たら参加しないわけにはいかないでしょう。それにうちのOGが高校チームや履正社さんにいるので、最後まで絶対に見ますよ」とニコニコ。マイティーエンジェルスや野田ファイターズレディースのような中学生チームにとって、教え子や先輩の活躍を見られるのが最大の楽しみのようだ。

横井監督

 先日の硬式の関西大会で優勝した大阪体育大学の横井光治監督は、「楽しみですよ。でもうち、軟式野球部もあるんですけど、ふだん交流する機会がないから、そちらも同じ日に参加できたらもっとよかったねってみんなで言ってたんですよ」と言う。なるほど、硬式と軟式、2つのチームをもつ大学ならではの感想だ。これを機に大学内でも硬軟の親睦会が開けるようになったら素晴らしい。

長野監督

 福知山成美高校の長野監督は、「関西女子野球界の先輩である軟式の皆さんの努力には本当に感謝しています。硬式と軟式という違いはあっても同じ9人でやる競技に変わりはありません。お互いに試合を見て、それぞれの野球観を見て、そこで感じ取ったものを日本の女子野球の発展につなげていけたらいいですね」と、いつものように誠実な口ぶりで話してくれた。

橘田監督

 履正社レクトヴィーナスの橘田監督は、「私は今日子どもたちに、5人友達を作ることが目標と言ってきました。野球を愛する気持ちに硬式も軟式もありませんから。私自身、今日オール兵庫の伊藤監督に子どものとき以来久しぶりにお目にかかったのですが、私が指導者になったことをとても喜んでくださって、すごくうれしかったです」と笑顔を見せる。

 大会の様子は写真でご覧いただこう。写真の上にカーソルを合わせて説明をお読みいただきたい。

23日の試合…軟式2試合、硬式2試合

開会式

左4チームが軟式、右4チームが硬式

伊藤理事長はオール兵庫の監督でもある

挨拶する伊藤秀次・関西女子野球連盟理事長。その後ろには硬軟の指導者の姿が。女子野球史上初のカット。

第1試合  軟  滋賀マイティーエンジェルスvs野田ファイターズレディース (2-1で滋賀の勝ち)
春のリーグ戦のリベンジを果たした? 滋賀(守) 名簿を見ながら観戦する大体大の皆さんと福知山成美の皆さん 

 パワーや技術は高校生にはかなわないが、一生懸命プレーする姿が好印象だった中学生の試合。見ていた高校硬式チームの選手の感想は、「中学までは軟式やっていたんですけど、今見ると軟球がスーパーボールみたいに見えるんですよね。こんなんでやってたんだって感じで、今だったらできないかも」。

第2試合  硬  福知山成美高校vs京都両洋高校 (2-1で福知山の勝ち)

創部2年目の京都両洋(左)は1、2年生。福知山成美は2、3年生

LSレディースOGの2年生エース、古谷投手は、この日最速114キロ 先発した徳原投手はオール兵庫ジュニアOG 全国から良い選手が集まる両チーム

 部活らしくキビキビとした動き、引き締まった内容と、この日一番盛り上がった試合。京都両洋高校に何人も選手を送り出しているオール兵庫のベテラン選手は、「うまくなったなあと思います。教わらないといけないところをちゃんと教わっているなあと。毎日一生懸命練習しているんでしょうね」とコメント。「面白かったです。あれなら入りたいっていう子の気持ちもわかるなあ」と言った軟式関係者もいた。

会場を盛り上げてくれた着ぐるみ隊

大人気のはばタン。中には連盟の女性役員が 男性指導者たちもこのとおり。お疲れさま 

第3試合  軟  オール兵庫vs大阪ワイルドキャッツ (4-0でキャッツの勝ち)

オール兵庫(左)は全国大会優勝経験多数。どちらのチームも若手の育成に熱心

関西リーグでは常に優勝を争っている両チーム オール兵庫のショート森井選手は昔オリックスの入団テストを受けた伝説のプレーヤー。日本代表経験も多数の40代

 軟式野球の強豪チーム同士の戦い。高校女子硬式野球部OGや中高生が活躍する一方で、30代以上の選手も多数活躍。

第4試合  硬  履正社レクトヴィーナスvs大阪体育大学 (2-1で大体大のサヨナラ勝ち)

応援歌を歌うなど、本当に楽しそうだった履正社レクトヴィーナス。ちなみにグラウンド整備なども熱心にやってくれました 野球初心者が多いというのが信じられないくらい上手な大体大

第4試合ゆえ、途中でストレッチなどを。さすが 大体大もランニングなどで体をあたためる 

 高校女子硬式野球部に入らなかった高校生たちが、専門学校生たちと力を合わせて戦った履正社レクトヴィーナス。対する大体大は専用グラウンドがないため、小スペースでもできる練習を積み上げて強くなった雑草魂(失礼)溢れるチーム。同じ硬式でも全員同じ方向を向いて練習している高校チームとは、両チームとも雰囲気や戦い方が違った。

主催者であり裏方でもあった軟式の関西女子野球連盟の皆さん

後片付けをする大阪ワイルドキャッツの皆さん 高校硬式チームに進学した軟式ジュニアOGたちと連盟の皆さん

30日の試合…軟式3試合、硬式1試合

 この日は取材に行けなかったので、連盟から届いた写真で紹介。

関西女子野球のオーバー30の皆さん(左)と大学選抜の皆さん(右)

関西の歴史を作ってきた人たち。関西には元女子プロ野球選手の70代チームもある   園田学園女子大、武庫川女子大、大阪芸大、大体大が参加 

中国地方ジュニア選抜(左・攻撃中)と関西ジュニア選抜(右)  

 中国地方からは岡山スカイマーメイドと広島レディースが参加 関西ジュニアリーグに参加する5チームが参戦

硬式のオール成美(左)と京都外大西(右)

福知山成美高校の選手たちで編成されたオール成美 全員高1生の京都外大西。ユニフォームは男子と同じですね

開かれた女子野球の新時代の扉

 23日の試合を観戦し終わって感じたのは、「なんだかよくわからないけど楽しかった」ということ。全試合見た方は、皆同じように感じたらしい。
 おそらく、ふだん一緒に見ることができない軟式と硬式の試合をいっぺんに見ることができたこと、それによって双方の違いがよくわかったからだろう。たとえばボールを打つ音が全然違う、軟球ってあんなに弾むんだ、やっぱり軟球って芯でとらえないと飛ばないんだ、硬球はスピードが出るなあ、など。またチームカラーの違いも驚くほどよくわかった。

 地元の人からすれば軟式から硬式、硬式から軟式へ移った人や、年齢を重ねた選手たちの「あの人は今」もわかって感慨深かったに違いない。
 今回は軟式主催で行われたが、次回は硬式と共同で開催できたらもっと素晴らしいと思う。

 どこよりも早く、どこよりもエネルギッシュに、女子野球の新時代の扉を開いた関西の皆さん。やるな関西! 恐るべし関西!

↓ おすすめサイト
画像の説明

 数ある女子野球サイトの中でもイチオシなのが関西女子野球連盟のそれ。デザイン、情報量とも他に類を見ない仕上がりで、試合結果の速報はもちろん、打率などの個人成績もきちんとアップ。管理人によるフワンと肩の力の抜けた3行コメントもイイ感じです。

powered by HAIK 7.3.7
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional