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数字で見る静岡県の女子野球

特集 静岡県野球連盟少年部の取り組み

数字で見る静岡県の女子野球

初の小学生の交流戦には保護者をふくめ200人近い人が集まった

県下初の女子学童の交流戦誕生

 
 平成26年(2014年)12月13日(土)、静岡県磐田市の2つの球場で、県下初の女子学童の交流戦が行われた。主催したのは静岡県野球連盟少年部(以下、県少年部)で、集まったのは東部地区、中部地区、西部地区(下記の地図参照)の6チーム。3チームずつに分かれて2つの球場で2試合ずつ戦い、女子だけの野球を楽しんだ。

静岡県の女子学童選抜

 県少年部副部長で、東部地区の選抜チーム「静岡イーストエンジェルス」の代表でもある林田孝一さんは、
「女の子だけで試合をする機会はほとんどないので、勝ち負けより野球を楽しむ時間を作りたいと思って企画しました。特に次のNPBガールズトーナメント(女子学童の全国大会)での活躍が期待される5年生の実力を見る良い機会にもなりました」
 と言う。この交流戦は今後も続けていく予定だという。

 ではなぜこの交流戦が生まれたのだろう。背景には平成24年(12年)に始まる小中学生の女子野球熱の高まりがある。

女子プロ野球のドラフト会議で当時の球団代表と握手する深澤選手。1期生はドラフト会議(自らくじを引く)でチームが決まった

 静岡県は平成23年まで女子野球の環境がほとんどなかった。唯一、浜松市に平成17年に誕生した女子硬式クラブ「ケイ・スポーツオレティーズ」があったが、22年をもって活動を終えている。

 同チームは現在愛媛県松山市で行われている全国大会「全日本女子硬式野球選手権大会」の第1回大会が静岡県草薙球場で行われるのを機に、スポーツクラブ「浜松ケイ・スポーツBC」が日本野球連盟(JABA)の指導を受けて作ったチームだ。
 一時期は深澤美和さん(沼津市出身。中京女子大学硬式野球部→女子プロ野球「兵庫スイングスマイリーズ」→「京都アストドリームス」。現至学館高校&大学女子硬式野球部監督)がプロ入り前に在籍したことがあるが、女子硬式野球の大会が少なく、また近くに練習試合の相手もいない環境とあって選手集めに苦労し、充分な活動ができなかったようだ。

Kボールの全国大会で善戦した三島のエース、高橋紗弥選手。その後スルガマリンガールズに行き、高校では野球環境がないためソフトボールに転向予定

 しかし平成24年8月に伊豆市でKボールの全国大会「第1回15U全国女子KB野球選手権大会in伊豆」が開催され、三島市の中学生を集めた「MISHIMA DREAM GIRLS」が3位に入賞し、地元紙がその活躍を連日報じたことから東部地区を中心に女子野球熱に火がついた。

 そして25年8月にNPBガールズトーナメントが開催されることになると、県少年部は女子学童の県大会を新設し、優勝チームが全国大会に出場するというシステムを作ったのである。
「本当は選抜チームを作りたかったんですが、静岡県は広いので簡単に集まって練習することができないと判断しました」と林田副部長。

 第1回県大会では東部地区選抜の「静岡イーストエンジェルス」が優勝し、全国大会に出場したが、初戦敗退。しかし昨年の第2回全国大会では同チームが見事準優勝に輝き、その健闘ぶりがまたまた地元紙やテレビによって連日報道され、子どもの女子野球熱がさらに高まったという。

静岡イーストエンジェルスの皆さん

「今まで野球をやっている女の子がいることすら知らなかった人にも女子野球が認知され、驚いたことに、昨年末、イーストエンジェルスのある東部地区の女子の入団数が昨年より25%近く増加している(149人→181人)ことがわかりました。おそらく来春には県下の女子学童選手の数はイーストエンジェルス効果でさらに増えることが予想されます。特に3年生以下の、今まで野球に見向きもしなかった学年層が、将来を見据えてのことでしょうか、徐々に増えているのが特徴です」
 と林田副部長は顔をほころばせる。

10年間の女子学童選手のデータ

 その林田副部長から、平成17年から26年までの10年間にわたる女子学童選手の数を記録した貴重なデータをお送りいただいた。掲載許可をいただいたのでご紹介したいと思う。

図1 静岡県の年度別少年野球人口
静岡県の年度別少年野球人口
 女子野球が盛んとはいえなかった静岡県だが、男子の数の急激な落ち込みに比べ、女子の数が増えているのが対照的だ。これを受けて県少年部は、数年後には女子の割合を20パーセントにまで引き上げるよう各地区を指導しているという。


図2 女子の割合(対学童選手の総数)、 図3 1チームあたりの女子の数
女子の割合 1チームあたりの女子の数

 男子選手の減少と対照的なこの数字を見て、県少年部は冒頭の交流戦を作り、女子選手のモチベーションを上げようと考えた。


図4 学年別女子学童選手の数
学年別女子学童選手の数

 次の全国大会出場を目指してか4、5年生が急増。同時に3年生以下も徐々に増加している。
「静岡県には4年生以下の公式戦『スーパージュニア大会』があり、この大会を通して男子も女子も小さいころから試合経験を積むことができます。男子が減っている以上、今後女子抜きではチームが存続できないケースが続出すると思われますが、この数字を見て、改めて低学年から女子選手を育てなければならないと感じました」(林田副部長)


図5 地域別女子学童選手の数と女子野球界のトピックス
地域別女子学童選手の数と女子野球界のトピックス

 現在のところNPBガールズトーナメントで準優勝した「静岡イーストエンジェルス」のお膝元で、深澤美和(沼津市出身)、坪内瞳(三島市出身)、塩谷千晶(三島市出身)、岩見香枝(沼津市出身)の、4人の女子プロ野球選手を出した東部地区が県の女子学童野球を牽引していることがわかる。
 そのせいか、県下唯一の中学女子硬式クラブ「スルガマリンガールズ」(函南町)や中学野球部の選手を集めた「MISHIMA DREAM GIRLS」(三島市)、大学の「日本大学国際関係学部女子硬式野球部」(三島市)も東部地区にある。
 課題はそれ以外の地域、特に中部地区の意欲の喚起だろう。

 地域の選手の数は女子野球界、特に各地区に関係する大きなトピックスがあると増加することもわかった。

課題は中学以降の環境作り

 急激に増えている女子学童選手だが、「受け皿になる中学以降の女子野球環境が少ないのが悩みです」と林田副部長は言う。

 以下、中学以降の環境を順に見ていこう。まずは少年部が把握している中学野球部の女子選手の数から。

中学野球部の女子選手の数

 グラフを見て一目瞭然、女子はほんのわずかしかいない。ちなみに中体連が発表している平成26年の静岡県の女子野球部員の数は81人。この差はデータをとった時期や方法の違いによると思われるが、いずれにせよ、決して多くないことに変わりはない。

 中学女子野球の火付け役となった「MISHIMA DREAM GIRLS」の長谷川記一監督(県野球連盟三島支部少年部長)は、
「現状、中学生になると男子との体力差が大きくなるので、ほとんどの子がソフトボールに流れてしまっています。それでも強い意志をもって野球を続けている子たちがいるのですから、それを踏まえて連盟と現場の指導者たちとで女子中学生の軟式野球環境を作らなくてはいけませんね。

 今全軟連が中学生の全国大会を企画していますが、この大会が起爆剤になって環境作りが進んでくれたらと思っています。中学生でも連盟が中心になり、公平なやり方で東部、中部、西部の代表チームを作り、県予選を行うのが理想的ではないでしょうか」
 と言う。

 中学女子硬式野球クラブ「スルガマリンガールズ」(13年春創部)も、選手集めが課題であるのは軟式と同じようだ。創部1年目の平成25年は6人、26年は11人、27年1月は7人(1年生の入部はこれから)だ。

中学以降の女子選手の数

「第1回NPBガールズトーナメントに出場した静岡イーストエンジェルスの選手たちが入ってくれたりしていますが、うちのグラウンドが県東部にあるせいか、通うのが大変だといって入団を諦め、野球をやめてしまったり地元のシニアやボーイズに入ってしまうケースが多いのが残念です。
(硬式の女子中学生リーグの)ヴィーナスリーグ・Uリーグに参加していますが、埼玉県まで試合をしに行くのも正直言って大変です。でも静岡県の女子中学生のためにがんばらなければと思っています」
 と小早川和弘代表は言う。

 参考までに紹介すると、チームを率いる岩見正樹監督は、平成26年に女子プロ野球のトライアウトに合格した岩見香枝選手(伊豆シニア→埼玉栄ソフトボール部→日体大ソフトボール部)の父だ。

 高校生の女子野球環境を見てみると中学生より環境はさらになく、軟式も硬式も、女子野球部の数はゼロである。しかし幸いなことに平成26年4月、日本大学国際関係学部に女子硬式野球部が誕生した。
 創部1年目は選手は1人しかいなかったが、27年には人数がそろい、各種大会に出場できる見通しだという。ただし大学という性格上、他府県の高校女子硬式野球部OGの入部が多いため、いかに静岡県の人々にチームの存在をアピールできるかが今後の発展の鍵になってくるだろう。

 社会人クラブについては、現在、チーム数はゼロである。

ではどうすればいいのか。数字から見えてくるもの

 さて静岡県の現状を数字を元に見てきたが、中学以降の環境作りが遅れている現状は、多くの県が抱える共通の課題だろう。

交流戦の閉会式で優秀選手の表彰を受ける選手たち

 ではどうすればいいのか。図5からもわかるように、県出身選手が大きな大会などで活躍すると女子選手の数が増えるので、まずは活躍できるだけの選手を育てるべく女子大会などを作り、選手の育成やレベルアップに力を注ぐことが大切だろう。選手が活躍したら、マスコミだけでなく、連盟自らホームページなどで積極的に宣伝するのもいいのではないだろうか。

 またせっかくチームができても、一つだけではやがて活動が収束してしまうのはケイ・スポーツオレティーズの例を見ても明らかだ。やはり女子選手が通年活動できるクラブチームや学校女子野球部が県内にいくつもでき、お互いに交流して切磋琢磨できるようになるのが理想だ。
 そのためには県野球連盟と軟式や硬式の女子野球連盟、学校関係者などが連絡を取り合い、協力体制を作ることが非常に重要である。

 しかし一番大切なのは、まず各種野球団体や学校関係者が女子野球を競技として認め、「その普及に努力しなければ野球界に未来はない」ということを認識することではないだろうか。その意味で、静岡県野球連盟少年部が10年前からきちんと女子と男子を分けてその数の把握に努めてきたことは賞賛に値する。

女子小中学生の環境作りを進める県少年部の皆さん。交流戦にて

 
 もし他にもデータを取っている県があったら、ぜひデータを眠らせずに女子野球の環境作りに役立てていただきたい。こうすれば環境が作れるという特効薬はないが、数字を読み解くことで様々なヒントが見つかるのではないだろうか。静岡県が県大会のほかに女子学童の交流戦や低学年大会の重要性に気づいたように。

「まだまだ道半ばというより、やっと緒についたばかりというのが現状ですが、状況を少しでも改善していけるように、情報交換しながら皆で努力をしていきたいですね」と林田副部長は語った。

※交流戦の写真提供/静岡県野球連盟少年部

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