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第4章

調査報告 2020年12月26日

第4章 少年野球経験と野球開始年齢の影響

 第3章で野球経験年数が長いほうが基本的競技能力が高くなることがわかった。そこで少年野球経験と野球開始年齢の2つの面から、記録への影響を検討した。

少年野球経験の影響

少年野球経験があるほうが記録は上

 表1より、中学生の走力(50m走、ベースランニング)を除き、少年野球経験者のほうが非経験者より記録が良く、学童時代の野球経験がパフォーマンスに影響を与えることがわかった。

 この傾向は少年野球を経験後、長いブランクがあった大学生や、年齢を重ねた社会人20代でも同じだった。このことから学童時代に身につけた野球の感覚や技術は、大人になっても失われないことが明らかになった。

※社会人30代、40代には学童時代、野球経験がほとんどなかったため、分析対象からはずした。
※表で黄色くマーキングした「有意差あり」の種目は、その年代の経験者と非経験者の平均値が、統計学的に見ても差があることを意味している。

少年野球経験

野球開始年齢の影響

 何歳で野球を始めた選手の能力が高いのか、神経系の発達の面から、また中学生の記録から検討した。

プレ・ゴールデンエイジの優位性

 図1はスキャモンが1930年に発表した身体の発育度を年齢を追って示したものだ。

スキャモンの発育曲線

 運動神経の発達は、脳やせき髄の発育を示す「神経系型」の曲線を参考にする。

 神経系は生まれてすぐに急激に発達し、その発育度は6歳ごろに約90%、12歳ごろにほぼ100%に達するが、一般的にこの期間はプレ・ゴールデンエイジ(4~9歳ごろ)とゴールデンエイジ(10~12歳ごろ)の2期に分けられる。そしてしばしば子どもの運動神経の発達には、ゴールデンエイジ(見よう見まねで即座に動作の習得ができる年齢)の重要性が指摘されるが、本調査の対象者はどうだったのか。

 図2は上位者(対象者数の上位20%)と非上位者(20%未満)の野球開始年齢を、年代別、種目別に整理したものだ。
 一見して上位者は非上位者よりプレ・ゴールデンエイジ開始者が占める割合が高いことがわかる。このことから、走力、投力、打力とも、ゴールデンエイジより早い、プレ・ゴールデンエイジに野球を始めることの優位性が示された。

※プレ・ゴールデンエイジ開始者が対象者全体に占める割合は、中学生86%、高校生52%、大学生29%、社会人40%と年代によってバラバラなため、年代をまたいで数値を比較するのではなく、同じ年代の上位者と非上位者の数値を比較してください。

プレ・ゴールデンエイジ開始者の占める割合

中学生の開始年齢別能力比較

 少年野球経験者の中でも、何歳に始めた選手の能力が高いのか、中学生のデータを使って検討した。中学生に絞ったのは、小学校、中学校と野球を専門的に続けている人が96%を占め、他のスポーツ経験の影響が少なかったからである。

 図3は少年野球経験者の記録を開始年齢別に比較したものである。どの種目も早期に開始した選手の記録が良く、有意差が現れたのは、50m走は5~8歳群と9~11歳群で、以下ベースランニングは5~9歳群、投球速度、遠投距離、スイングスピードは5~6歳群の記録が有意に良かった。

●開始年齢別平均値&SD

上位進出率は5~6歳開始者が高い

 図4は、開始年齢別に上位進出率を示したものである(上位とは対象者数から見た上位20%)。この比較でも全種目、早期開始者の上位進出率が高い傾向にあり、特に5~6歳で始めた選手の進出率の高さが目立った。

 前述したスキャモンの発育曲線を見てもわかるように、この年齢は神経系の発達がほぼ完成に近づいている時期で、選手の運動能力を育てるには、学童期よりも早い、幼児期が大切であることがわかる。
 
●開始年齢別上位進出率

注意すべき点
 気を付けなければならないのは、5~6歳の子どもは骨や筋肉などの発達が未熟なうえに、練習の意味や効果に対する理解も不充分なことだ。
 そのため競技のための練習をさせるのではなく、遊びを通してボール投げやバットスイングの感覚を身につけさせることが適当だと考えられる。
 成長軟骨の損傷といったスポーツ障害を予防するうえでも、指導には充分な注意が必要だ。

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