第3章
調査報告 ★2020年12月26日
一部論文の抜粋
第3章 野球経験年数と記録の関係
※「論文」とは、「女子軟式野球選手の基本的競技能力調査報告」を指します。
※文章や表中の「〇〇±△△」は、「平均値±標準偏差」を表します。
全年代、全種目、野球経験年数の影響を受ける
「平均値以上の群」と「未満の群」の野球経験年数の比較から
表のように、すべての年代、種目で、平均値以上の群は未満の群より、有意に年数が長かった。
種目別・野球経験年数と記録の相関から
図1~5より、中学生~大学生まで(学校段階別。1年刻み)の野球経験年数と記録は、投力(投球速度、遠投距離)、打力(スイングスピード)で強い相関があった。特に遠投力は野球経験年数の影響を最も強く受けることがわかった(r=0.89)。
走力の相関は、50m走…中程度の相関、ベースランニング…弱い相関で、投力や打力より弱かったが、これは走力の向上には必ずしも野球経験が必要ではないからだと考えられる。
しかし走塁技術など、野球経験年数が反映されると思われるベースランニングの相関が、50m走より弱かった理由はわからない。
※社会人は人数が少なく、また年齢の幅が大きかったため、相関の検討はしなかった。
※「第6章 上位者の特徴」でも、50m走とベースランニングの上位者の野球経験年数を比較し、別の知見が得られているので、そちらもぜひご一読ください。
以上より、基本的競技能力は、全種目野球経験年数の影響を受けることが明らかになった。
この結果を踏まえ、第1章で対象者全体の平均値が中学生が最も高かった理由を再検討すると、以下であると考えられる。
1 大学生までは中学生の野球経験年数が最も長く(中学生全体の平均年数 5.1±1.84年、高校生4.1±3.50年、大学生3.4±3.47年)、3年以上の野球経験者率も90%と一番高かったこと(高校生53%、大学生42%)。
2 社会人は全体の平均野球経験年数が13.9±7.81年と全年代で一番長く、3年以上の野球経験者率も96%と高かったが、加齢の影響が現れ、数値が伸びなかった。
※論文では、50m走と遠投距離の加齢による変化の分析、および両種目のデータと一般女性のデータ(スポーツ庁)との比較も行っています。ぜひご一読ください。