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第7章

調査報告 2020年12月26日

 論文の抜粋

第7章 男女差 ~中学男女の能力比較

※「論文」とは、「女子軟式野球選手の基本的競技能力調査報告」を指します。

 2014年の中学男子軟式野球選手と、2017年の中学女子軟式野球選手(本調査)の比較を行い、男女差を明らかにした。

 男子のデータは沖縄県で開かれている「中学野球っ子記録会」(仲本裕樹主催)のもので、本調査と比較したのはベースランニング、投球速度(終速)、遠投距離、スイングスピードの4種目である。
 仲本の測定はバットの重さを除き、ボール、測定方法、測定器とも本研究と同じである。

加齢による平均値の変化 ~第二次性徴期の影響

女子は「への字形」、男子は「右肩上がり」に変化

 男女差は中学 1 年の段階ですでに現れている。ベースランニング、投球速度、遠投距離は男子が女子の値を上回ったのに対し、スイングスピードは女子が男子を上回った。これは女子のバットが男子より軽かったからだと考えられる。

 また女子中学生の競技能力は、1年生(12~13歳)から 2 年生(13歳~14歳)にかけて大きく向上するが、その後は向上率が下がり、スイングスピードのピークは 2 年生、ベースランニング、投球速度、遠投距離のピークは 3 年生(14~15歳)だった。
 一方男子は全種目右肩上がりで、年齢を重ねるにつれ、女子との差が広がった。
 
 中学時代に男女差が大きくなるのは、第二次性徴期に入って性ホルモンの分泌が盛んになるからである。宮下(1980)はその影響が運動能力に現れるのは男女とも13歳ごろで、それを境に女子は筋肉より体脂肪が増えて運動能力が停滞または低下し、男子は体格が大きくなると同時に筋肉がついて、筋力が著しく増大すると報告している。

加齢による平均値の変化

種目別向上率

 表1と表2より、第二次性徴期がもたらす競技能力の変化について、以下のことが明らかになった。

男女差が最も大きいのは遠投力

 中学時代、最も向上するのは男女とも遠投力で、男女の向上率で一番大きな差が出たのも遠投力だった(男子の向上率41.7%、女子の向上率14.1%)。

 しかし男子は投球速度、スイングスピードも 20%を超す向上を見せており、中学時代、女子が打力や投力で男子に大きく引き離されていく現実が、これらの数値から見て取れる。

向上率

男女の能力差は一律ではなく、種目によって異なる

 中学3年時の平均値は全種目で男子が優位だった。また種目別男女差は一律ではなく、走力(ベースランニング)や打力(スイングスピード)より、投力(投球速度、遠投距離)の差が大きいことが明らかになった。
〇男女比率

 なお、仲本の 2010 年のデータと本研究のデータを比較したところ、男女差は、ベースランニング13.8%、投球速度 20.7%、遠投距離36.0%、スイングスピード 12.1%(参考値)だった。2014 年の男女差より遠投距離の差が大きく、この種目は個人差が大きいと考えられる。

 また本研究の走力と遠投力の数値の妥当性を見るために、スポーツ庁の「体力・運動能力調査」の 50m 走とハンドボール投げの男女差(中学生)を調べたところ、2012 年から 2017 年の 6 年間で、50m 走は 13.2~13.6%、ハンドボール投げは 39.4~40.6%だった。
 これにより、本研究の走力と遠投力の男女差は、一般男女の運動能力の差に準じていると考えられる。

女子の上位者の競技能力

 女子の上位者の平均値は男子の何年生に相当するのか検討した。
 図2より、体力的に男女差が広がる中学時代にあっても、男子と同等の競技能力を示す女子選手がいることが確認された。

女子の上位者

   加齢による平均値の変化
   種目別向上率 



沖縄男子


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