15年12月
中京大学、秋季東海リーグで全勝優勝。監督は大学1年生（2015年12月12日）
中京大学、至学館大学、皇學館大学、椙山（すぎやま）女学園大学、桜花学園大学、愛知医療学院短期大学と、6つの大学が加盟している東海の大学軟式野球リーグ。92年に金城学院大学に初めて女子野球部ができて以来次々とチームが生まれ、関東に次ぐ大学女子軟式野球のホットスポットになっている。
その秋季リーグ。雨でたびたび試合が延期になったが、12月6日に最終戦を終え、中京大学が全試合無失点で優勝を飾った。
大会紹介ページをご覧いただくとわかるとおり、東海リーグは長年至学館大学と中京大学が優勝を争ってきたといっていい。しかし今季は強肩強打の捕手がチームを引っ張る皇學館大学や、速球とキレのいい変化球が武器のエースを擁する椙山女学園大学が善戦し、それぞれ2位と3位に入った。
中京大学の勝因は、軟球でありながら120㎞に迫る速球を投げるエース、井口香奈選手（3年、愛知県立刈谷北高校）をはじめ、緩急をつけて打者を打ち取る軟投派、サイドスローなど、個性豊かな投手を5人もそろえていたことだ。
全員四球がほとんどなく、ストライクが先行する上々の投球内容。加えて守備が堅く、失策はわずか2つだった。
宿敵至学館戦では、バントを多用して足で揺さぶってくる相手の戦法に苦しんだが、ランナーを背負ったシーンで投手が気迫の三振を奪うなどしてホームを踏ませなかった。椙山女学園戦では0－0で試合が膠着するなか、4回にホームランを放って勢いに乗った。
投手の育成や打撃の強化は、この秋から監督に就任した小野有輝さん（岐阜県立斐太高校硬式野球部OB）が行ったこと。実は小野監督、現代社会学部1年の学生である。
中京大学は2年前から学生が監督コーチを務めるようになっていて、小野監督は入学早々サークル紹介で女子野球サークルのコーチに声をかけられ、指導陣に加わったのだという。
「将来教員になって高校野球の指導者になりたいので、そのための勉強になると思って」（小野監督）
実は日本体育大学も学生が監督コーチを務めているが、彼らも将来教員になったときのために女子野球部の指導を引き受けることが多い。小野さんも日体大の学生も、これからの時代、男子だけでなく女子野球部の監督も目指してくれるとうれしいのだが。
それにしても中京大学の現在の選手は2～4年生ばかり。やりにくくはないのだろうか。
「やっぱり先輩ですから指導は難しいですね。でも僕はガンガン指示を出すのではなくて、見ていてここはいかんなという時にきっちり言うタイプなので、特に衝突はありません」
と笑う。では「ここはいかんな」と思ったのはどんな時だったのだろう。
「雨のあと、選手たちがグラウンドの水を拭くのを嫌がった時です。それでは相手に失礼だし、もし負けたら雨でグラウンドコンディションが良くなかったからと言い訳をするつもりなのかと叱りました。野球が好きなのは男も女も同じです。だからこそ野球に取り組む姿勢やマナーをしっかり身につけてほしいと思っています」
伝えるべきことはしっかり伝えながら、「まだ勉強中の身ですから」と言ってチーム作りや軟式野球の勝ち方について研究を重ねる19歳。
東海には至学館大学の松村真監督のように、初めはそれほどではなくても、夏の全国大会までには優勝を狙えるチームに仕上げてくる名将もいるだけに、そのなかで小野監督がどんな戦いぶりを見せてくれるかも、今後の見どころとなりそうだ。
●中京大学、2015年秋季リーグの戦績
皇學館大学戦6－0 桜花学園大学戦5－0 至学館大学戦4－0 椙山女学園大学戦5－0 愛知医療学院短大戦8－0
※写真提供／中京大学女子軟式野球サークル
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