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15年8月

アルペンガールズ富山、打って守って楽しんで、全国大会初制覇(2015年8月20日)

伸び伸び野球で日本一を手にしたアルペンガールズ富山

 36都道府県38チームが参加した「NPBガールズトーナメント2015」(第3回大会)が8月13日閉幕し、アルペンガールズ富山が第1回大会の覇者、オール愛知ガールズを逆転で破り、初優勝した。

今大会屈指の好ゲームとなった徳島(手前)vs青森戦

 今大会は1回戦で昨年の優勝チーム、徳島県選抜が青森ゴールデンボンバーズと壮絶なシーソーゲームを繰り広げた末サヨナラで破れ、また昨年準優勝の静岡イーストエンジェルスが3回戦で千葉ドリームガールズに惜敗。その千葉も準々決勝で姿を消し、昨年ベスト8(第1回大会は3位)の栃木スーパーガールズも1回戦で敗退するなど、過去2大会とは異なる展開となった。

 代わりに躍進したのが大阪ベストガールズ、オール宮城ブルーリボン、神奈川県のYAMAYURIと石川県の輝(かがやき)プリンセス、そして富山アルペンガールズだ。

8強入りしたYAMAYURI(右)。佐賀戦にて

 大阪ベストガールズとオール宮城ブルーリボンは3位に入賞。どちらも知る人ぞ知る強豪で、前者は近畿女子大会で5連覇、後者もIBA-boysの全国大会で5連覇という輝かしい成績を引っさげて全国大会に挑んできた。
 しかし大阪ベストガールズは前2大会とも山梨選抜に破れて3回戦が遠く、オール宮城ブルーリボンも初参加の昨年は強豪、オール愛知ガールズに破れて初戦で姿を消した。ゆえに両チームとも今回ようやくその実力を全国に知らしめることができたといえる。

 また第1回大会から県下の精鋭を集めて大会に臨んできた神奈川県は、努力が実って今年遂に8強入り。輝プリンセスも初出場でいきなり8強入りは立派だった。

 しかし何よりも人々を驚かせたのはアルペンガールズ富山の快進撃だろう。初戦から準々決勝まですべて2ケタ得点で勝ち上がり、準決勝のオール宮城ブルーリボン戦も7-0の完封勝利。堂々たる決勝進出だった。
 勝因は「どこに投げても打たれる」と相手チームの監督を嘆かせたほどの強力打線と、共に100キロに迫る球速を誇る高杉結芽(ゆめ)と沼田奈瑠美の二枚看板の活躍だった。

第1回大会は優勝、第2回大会は3位、今大会は準優勝と、毎年チームを上位に導くオール愛知ガールズの石井監督

 一方もう一つの決勝進出チーム、オール愛知ガールズも1回戦から準決勝まですべて2ケタ得点という他の追随を許さぬ強さ。数日前、全日本学童にも出場した捕手で主将の四元由結(ゆき)をはじめ、強打者、高橋咲耶、堅守で鳴らす藤井亜子などタレントぞろい。こうした15人の6年生の気持ちを石井利一監督が上手に盛り上げながら、王座奪還を目指して勝ち上がってきた。

 決勝戦は両チームの応援団によるエールの交換から始まった。愛知の応援団が富山に呼びかけ、それに富山がこたえたのだ。普通ならピリピリとした空気に包まれる決勝戦が、おかげで和やかさとすがすがしさのなかでスタートした。

富山の先発、高杉投手

 富山は高杉、三谷胡乃葉のバッテリー、愛知は今大会初登板の四元と、高橋のバッテリー。

 1回表、高杉は打者3人に打ち取る上々の立ち上がり。愛知の四元も制球に苦しみながらも2回まで無失点に抑える力投。
 迎えた3回表、愛知は敵失で出塁したランナーを一番・藤井がレフトオーバーの二塁打で返し、1点先制。愛知は4回にも四番・高橋がバットを豪快に振り抜いて今大会2本目のホームランを放ち、2-0と富山を突き放す。高橋の1大会2ホームランは大会記録だ。

ホームランを打つ高橋選手

 しかし2点先行されながらも富山の選手たちはめげなかった。4回裏、三盗した林夏妃が内野ゴロの間にホームを陥れて1点返すと、勢いづいた選手たちはここから怒涛の反撃に出た。高杉と6回から登板した沼田は投げるほどに腕がよく振れるようになり、球の伸び、威力ともアップ。スコアボードには95、96という球速が表示される。打線も爆発し、5回裏、三番・高杉、四番・沼田が連打で出塁すると、六番・三谷の適時打などで3-2と逆転する。6回には二番(小出優生)、三番、四番が長短打を放って5-2。

 最後は沼田が打者をショートフライに打ち取って試合終了。マウンドの上でクルリと後ろを向いてボールの行方を見ていた沼田は、その瞬間、喜びのあまり両手を上げてピョンピョンとジャンプした。他の選手たちもピョンピョンと跳ねていた。みんなキトキト(※)の魚のように跳ねていた。

6回裏、二塁打を打って5点目を奪った沼田選手。投手としても優勝に貢献した 優勝が決まった瞬間、ジャンプする沼田投手

 終わってみれば愛知は富山の投手陣の前に散発5安打に抑えられ、中盤以降得点することができなかった。王座奪還のプレッシャーからか動きが固い愛知に対し、失うものは何もない富山の選手たちは、入場してきたときから伸び伸びとして楽しそうだった。

「みんな打つの好き?」
 インタビューで聞くと、集まった富山の選手たちは「だーい好き!」「(大会中)全員打った!」「下位も打ったよ!」と、またまたピョンピョン跳ねながら答えてくれた。

富山の選手たち

「緊張した?」
「ぜーんぜん!」「すっごく楽しかった!」
「決勝はオール愛知ガールズって聞いてどう思った?」
「絶対勝てるって思った!」「こっちのが強いって思ってた」「ポジティブっていうやつ!」

 よく鍛えられたチーム、優れた選手を何人も擁したチームは他にもいろいろあったが、富山チームがどこよりも勝っていたのは、この並外れて強い「楽しい!」という思いだったと思う。子ども、特に一度シュンとするとなかなか立ち直れない女子にとって、その思いがどれほど大切か再認識させられた大会だった。

 新しい勢力が台頭してきて益々面白くなってきたNPBガールズトーナメント。来年はどんなチームが頂点に立つのだろうか。

※キトキト…新鮮、生き生きした、という意味の富山の方言

アルペンガールズ富山の

高杉選手

高杉結芽選手中野良美監督にインタビュー

 エースとして全試合に登板し、決勝では4打数3安打と打撃でも大活躍した高杉選手は富山市の少年野球チーム「新庄ジャイアンツ」のエース。
「決勝で先発と言われてちょっと緊張しました。でもピッチャーが打たれてもみんなが守ってくれるので、打たせて取ろうと思いました。バッティングは『とにかく打とう』と思っていました。優勝できてとてもうれしいです」

中野監督

 金沢学院大学女子軟式野球部OGの中野さんは、女子大生の軟式の全国大会(富山県魚津市開催)でかつて何度も優勝した経験をもち、現在でも女子軟式野球クラブ「ビームス」でプレーする現役女子野球選手だ。
 女子野球歴が長いだけに女の子たちの扱いはお手のものと思いきや、
「いえいえ、私は何もしていません。技術も子どもたちは本来のチームでしっかり練習してきていますから。決勝の前には『いつもどおりに』と声をかけました。決勝ではコーチャーのリードもすごくよかった。みんな自分たちのバッティング、守備を、楽しみながらできたと思います」

 選手たちによると、時にはお笑い芸人の物真似をして緊張をほぐしてくれたとか。集中して話を聞かないときはビシッと叱るが、そうでないときは面白くて頼れるお姉さん。そんなメリハリのきいた監督なのだった。

 
ホームランを打った高橋選手を迎える愛知の選手たち 全日本学童では投手で登録していた四元選手は、今大会では主に捕手を務めた 愛知は4人の投手が継投。写真は二番手の平蒼唯(あおい)選手

2回裏、本塁をうかがう林夏妃選手。投手は愛知の四元選手 富山の主将、牛島麻里選手。俊足 他チームを驚かせた富山の強力打線 

●大会結果(全軟連のサイトより) → 
2015 NPBGT(570)


埼玉県の警備会社が、来春女子硬式野球チームを創部(2015年8月11日)

 来年4月、埼玉県に全国で4つ目の企業チームが誕生する。立ち上げるのは警備事業を主たる業務とする㈱ゼンコーサービス(本社・富士見市)で、チーム名は「ZENKO BEAMS(ゼンコービームス)」。監督には女子硬式野球クラブの指導経験がある長田果倫さん(28歳)が就任する。

「創部の理由は、弊社の海野社長が『男性のイメージが強い業界に女子力を活かして旋風を吹かせ、新たなビジネス機会を創造したい』と考えたからです」と長田さん。
 大学まで野球を続けた海野社長の野球への思いと、女子野球が盛んな埼玉県という土地柄がマッチして、女子硬式野球部の創部となった。

 選手は社員として採用されるが、「野球がうまければ採用するというわけではありません。ほしいのはまず社会人としてきちんと仕事ができる人です」(長田さん)。

 練習は土日祝。用具は会社から支給され、公式戦は出勤扱いになるなど、企業チームならではのメリットがいっぱいだ。残念ながら専用グラウンドがないため近隣のグラウンドを使用するが、現在女子野球選手のための社宅を建設中といい、会社の本気度がうかがえる。

「仕事のために野球をやめざるを得ない人が多いなか、恵まれた環境で野球ができる企業チームの誕生はありがたいです。会社や女子野球界への恩返しのために、ぜひ強いチームを作りたいと思います」と長田さんは熱く語る。

 現在スカウト活動実施中。採用基準は高校卒業以上なので、我こそはと思う人はぜひ問い合わせてほしい。軟式野球やソフトボールなど、硬式野球以外の選手でも応募できるそうだ。

●問い合わせ先/049-278-2333(ゼンコーサービス 担当・長田)
●海野社長からのメッセージ → 
●参考URL/http://www.kkzs.co.jp/index.html(株式会社ゼンコーサービス)
       https://www.facebook.com/pages/ZENKO-BEAMS/989171037783981(チームfacebook)


石巻市に中高生の硬式クラブ誕生。8月末のユース選手権に参戦(2015年8月6日)

 宮城県石巻市に今年6月、「石巻ユース・サクラガールズ硬式ベースボールクラブ」が産声をあげた。現在高校生13人、中学生2人が、8月17日から埼玉県で開催されるユース選手権大会に向けて練習を重ねている。15人のメンバーのうち8人が野球経験者だ。

石巻ユースの皆さん

 東北には高校生以上の女子硬式野球チームがないため、高校生が硬式野球をできる環境ができたのは喜ばしい。しかも監督兼責任者の梅村秀俊さん(石巻市立桜坂高校教諭)は女子硬式野球との関わりがとても長いのだという。

 実は女子高校生の硬式野球黎明期の1999年(平成11年)、第3回夏の全国大会に石巻女子高校ソフトボール部を率いて出場したのが梅村さんだった。続く第4回、5回、8回大会にも出場し、第10回大会には転任先の仙台女子商業高校ソフトボール部を率いて出場している。(参考→全国高等学校女子硬式野球連盟のサイト

 その後指導していたソフトボール部が全国大会に出場するなどして忙しくなり、また転任先の学校の許可が得られなかったりして野球から遠ざかっていたが、9年後の今年、遂にクラブチームを創部したのである。

「せっかく選手が育ってもみんな高校になると県外の学校に行ったりソフトボールに流れてしまう。それでは東北に女子野球は育ちません。それで創部を決意しました」(梅村監督)

東北の女子野球硬式チーム

 創部にあたっては中学生の硬式野球環境も作りたいと考え、中高生クラブにすることに決めたという。また自身が桜坂高校の教員であり、同校ソフトボール部員も入部を希望したため、学校に許可をとるなどして準備を進めた。教育委員会をはじめとする教育機関に理解を求めたのはもちろんである。

「最近の子どもたちは『先生無理無理、できません』と言うことが多いのですが、私は子どもたちに諦めないでほしいんです。野球の環境は私たちが作るので、ぜひチャレンジしてほしいと思います」
 今後は仙台市を拠点に活動している女子プロ野球の東北レイアとも交流しながら、東北の女子野球を盛り上げていきたいという。
 
 練習は毎週土曜日の16時半から18時半。石巻市民球場や河南中央公園野球場(共に石巻市)などで行っている。中学生の人数がそろえば、中学生の全国大会にも出場したいという。選手は随時募集しているのでぜひ問い合わせてほしい。

 東日本大震災で大打撃を受けた石巻市にともった女子硬式野球の灯。その明かりが市民を元気づけ、ひいては東北全域を照らすことを願っている。

●問い合わせ先/0225-22-4421(桜坂高校 梅村)


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