女子野球情報 

17年8月

第21回夏の全国大会で、埼玉栄高校が通算7回目の優勝(2017年8月7日)

斎藤監督に13回目のVをプレゼントした選手たち

 埼玉栄高校が履正社高校を破り、夏の全国大会で通算7回目の優勝を飾った。神村学園がもつ優勝記録6回を更新しただけでなく、斎藤監督にとっては春夏通して13回目の優勝だった。

 この大会、埼玉栄は神村学園(9-2の6回コールド)、蒲田女子(3-2。降雨中断後、0-2から逆転)、開志学園(5-2)を破って決勝に進出した。
「決勝の相手が履正社となったとき、2回は負けられないなと思いました」と斎藤監督。そして、「春の決勝や今回の履正社の試合を見て、守備がしっかりしているし、僅差の試合になるだろうと思っていました」と言う。

 一方の履正社は、日南学園(6-0)、京都外大西(5-4。延長8回の裏、2死ランナーなしからの4連打で逆転サヨナラ)、福知山成美(1-0、延長8回)を破って勝ち上がってきた。
「どの試合も本当に苦しかったです。春に優勝したから負けられないというプレッシャーはなかったですけど、全国大会独特の雰囲気に、みんな普通に緊張していました」と橘田監督。

 その決勝。先攻履正社。後攻埼玉栄。
 斎藤監督は先発に1年生の藤田捺己(なつみ)を起用した。藤田は初戦と準々決勝はリリーフ、準決勝では先発して、この大役を任された。履正社は2年生の石村奈々がマウンドへ。春の全国大会では指の骨折で登板できなかったが、今大会はエース松島瑠菜と2人でチームを引っ張ってきた。その若い投手たちをリードするのは、埼玉栄が池田彩菜、履正社が香川怜奈という3年生捕手たちだ。

「先輩たちにいいプレーで助けてもらっていたので、自分がピッチングで返さなきゃと思って投げました」(藤田選手) キレのある速球が武器の履正社の石村選手。4回を除き、打者をほぼ3人に抑えた

 序盤は石村と藤田の投げ合いになった。石村は3回までノーヒットに抑える力投。藤田は毎回のようにランナーを出すも後続を断ち、三塁を踏ませない。
 しかし4回裏、試合が動いた。埼玉栄の三番・蛭田(ひるた)菜月が石村をとらえ、右前打で出塁すると、四球と五番・小野あゆみの中前打で1死満塁。「点を取るならここしかない」と思った斎藤監督は、この状況ではほとんどやったことがないというスクイズを指示。六番・藤田が三塁前にきっちり転がし、観客がどよめくなか、蛭田が生還。続いて二塁から俊足の池田がホームを襲うが、タッチアウト。しかしこの1点が決勝点となり、埼玉栄が春のリベンジを果たした。

1234567
履正社00000000
埼玉栄000100×1

 履正社は5回にヒットで1死一、二塁とするが、次打者が三振する際に、飛び出した二塁ランナーが捕手の好送球で憤死。6回には疲れの見えた藤田を攻めて2死二、三塁としたが、スイッチした廣瀬杏樹に抑えられて、再三のチャンスを生かせなかった。
 終わってみれば履正社のヒットは5本、埼玉栄は4回の2本のみ。まさにワンチャンスを生かした勝利だった。

 今回注目を集めたのは、斎藤監督による1年生投手の積極的な起用だ。藤田投手は昨年の中学生の全国大会でベスト4に入った福島選抜のエースで、3試合で31奪三振を記録した選手。さらにいえば、第1回NPBガールズトーナメントで福島県のエースとして1回戦で勝利し、県民を勇気づけた選手でもある。また初戦と準々決勝で先発した石垣麻弥乃投手も、昨年の中学生の全国大会で準優勝した、埼玉スーパースターズFの右のエースだった。

履正社の北山未来選手は決勝で打率5割の活躍。捕手は埼玉栄の池田選手

 
 彼女たちの起用の理由を斎藤監督に尋ねると、「エースの田中志緒梨が大会前に不安定になってしまったからです」とのこと。結果、試合経験豊富で安定感のある1年生たちの起用になったわけだが、「実際よくやってくれました。でも藤田はちょっと無理をさせてしまったかな」と反省の弁も。

 藤田選手は「大会前は調子が良くなかったので、どこまで行けるか不安だったんですけど、先輩たち、特に(捕手の)池田先輩が『打たれてもいいから思い切り投げろ』と言ってくださったので、集中して投げられました。最後は疲れてコントロールが乱れてしまいましたが、納得のピッチングができました」と言う。
 その池田捕手について、斎藤監督も「優勝の陰の功労者」と評価した。

 春夏連覇がならなかった履正社の橘田監督は、「今までヒット数が勝っているのに勝てなかったことがないので、固くなってバントが決められなかったり、守備妨害を取られたりしてしまいました。今回は一度もタイムを取らなかったのですが、もっとタイムを取って、選手たちの緊張を取ってあげればよかったです」と振り返る。

今や押しも押されもせぬ強豪校に成長した履正社

「でも栄高校のプレーは素晴らしかったです。蛭田選手を中心に、みんなの視野が広かった(試合の状況が見えていた)。だからこそ、ワンチャンスをものにすることができたのでしょう」と相手を讃えることも忘れなかった。

 ところで優勝した斎藤監督だが、実は来年の3月で定年を迎えるため、これが最後の夏の全国大会だった。何か特別な思いを抱いて臨んだのかうかがってみると、「いえ、これが最後だとか、特に考えませんでした」と、いつものように淡々とした答え。
 今後のことは、「埼玉栄高校に教員として残ることは決まっていますが、女子硬式野球部の監督を続けるかどうかはわかりません。でも続ける可能性はありますし、監督を下りても何かしらの形でサポートします」とのことだった。

 今夏は春と同じ3校(上記2校+福知山成美高校)がベスト4に進出して、その強さを印象付けたが、全体のレベルが上がり、相変わらずどこが優勝してもおかしくない状況が続いている。そのなかでも、今回特に輝いていた3校をご紹介しよう。

■■ 開志学園高校(新潟県) ■■■
 この春からすべての指導者が交代し、同校の男子硬式野球部コーチだった漆原大夢さん(24歳。10年の夏の甲子園大会でベスト8に入った新潟明訓高校のOB。日体大卒)が監督に就任して、初のベスト4入りを果たした。準々決勝で古豪・花咲徳栄を破ったことも話題に。
「選手たちには『勝ち進むほど一つのミスが命取りになる。細かなプレーも一発で決めて、流れを引き寄せなければならない』といって、常にプレッシャーを与えながらバントやスクイズなどの練習をしてきました。
 花咲徳栄戦では声がよく出ていて雰囲気がすごく良かったし、2死一、三塁の場面でダブルスチールを決めるなど、練習の成果も出ました」と言う。
「やるからには優勝を目指します」という漆原監督の次なる目標は、8月17日からのユース大会だ。

指導陣が代わり、雰囲気も変わった開志学園

■■ 県立佐伯高校(広島県) ■■■

 創部3年目。メンバー10人で初の全国大会に挑んだが、福井工大附属福井高校に0-12で敗れた。しかし犬塚慧監督は「5回2アウトまで点を取られなかった。そこまで我慢できたことは自信になりました。また自分たちが思っていた以上に皆さんに注目してもらっていて、たくさんの人に出場おめでとうと言われたことがうれしかったです。これからも公立校としてがんばらなくてはと思いました」と言う。
 まだグラウンドも整備されていなかった創部当時、たった2人で始めた1期生たち(3年生)は、「やめたいと思ったこともあります。佐伯に入ったことを後悔したこともあります。でも色々な人たちに支えられて、今こうして全国大会に出られたことが幸せです」と涙を流したという。

福井工大福井と4回まで0-0の好ゲームを展開 念願かなっての出場

■■ 札幌新陽高校(北海道) ■■■

 今年の4月にできたばかりのチームは、1年生ばかり26人。でも「手ごたえがありました。よくやったと思います」と石井宏監督。
 初戦で駒沢学園女子高校に0-1で敗れたが、1回表、先頭打者ヒットで出たランナーが二盗を試みたとき、金桃花捕手がこれを刺すなど、流れは新陽高校に来ていた。2回にエラーでランナーを出し、スクイズで1点取られて負けたが、選手全員、楽しんで伸び伸びと野球ができたという。エース亀田織音(しおん)選手についても「変化球でストライクがとれたし、マウンドさばきも堂々としていた」と合格点。
 今年はユース大会には出場せず、来春の全国大会に照準を合わせて練習していくそうだ。

1回裏、2死から左中間三塁打を打って出塁した三番・吉澤栞奈選手 身長173㎝の亀田投手

<追記> 初の柵越えホームランが出るか?

 女子高野連によると、来夏の全国大会では両翼にフェンスを置いて、外野を縮める可能性があるという。ただし「ホームランを出やすくするためではなく、元々スポーツピアいちじまは多目的グラウンドとして造られたために、両翼105m、中堅122mと、球場としてはかなり大きいからです。実際に設置するかどうか、また何mにするかは今後検討していきます」とのことだった。

※大会の結果 → 

※写真提供/埼玉栄高校、履正社高校、開志学園高校、佐伯高校、札幌新陽高校


松山市の新田高校硬式野球部が、女子選手受け入れへ(2017年8月3日)

新田高校正門

 7月31日、愛媛県松山市の私立新田高校が、来年4月から硬式野球部に女子を受け入れることを表明した。
「本校では、どの競技も一つの部の中に男女が並立する形態をとっており、野球部についても同様となります。したがって校内での名称は『硬式野球部女子』となり、男子と別に女子硬式野球部ができるわけではありません。練習も、男女でできるものは一緒にやっていく方針です」(永井博校長)とのことだが、女子の硬式野球の部活動が始まることに変わりはなく、地元では歓迎ムード一色だ。

 同校に女子硬式野球の開始を打診したのは、松山市だという。同市では06年から女子硬式野球の全国大会「全日本女子硬式野球選手権大会」が開かれているだけでなく、06年には大人の女子硬式野球クラブ「マドンナ松山」ができ、08年には「第3回女子野球ワールドカップ」も開かれている。
 また軟式では11年に小中高校生チーム「マドンナジュニア愛媛BBC」が誕生し、13年からは小中学生の大会「小野スポーツ交流女子軟式野球大会」も開催されている。その第1回大会が、愛媛県や松山市の全面的なバックアップのもとに開かれたことは、当サイトの記事で紹介したとおりだ。松山市と女子野球はとても深い縁でつながっているのだ。

広大な敷地の中に各部活の施設が点在している

 では新田高校とはどんな学校なのだろう。高校野球ファンならご存知かもしれないが、春の選抜大会に2回出場し、うち90年には準優勝し、「ミラクル新田」と称された学校だ。また今年の県の総体では団体の部11種目で優勝し、個人優勝も53人という驚異的な成績で、広く「スポーツの新田」として知られている。
 その一方で文武両道も目標に掲げていて、旧帝大をふくむ国公立大学や、関東や関西の有名私立大学に進学する生徒も多い。指定校推薦枠を使う場合もあるが、夏に部活が終わったあと、猛勉強して入学する生徒も少なくない。

 さて松山市が新田高校に女子選手の受け入れを打診したのは今年の6月のこと。その約1カ月後には学校が記者会見を開いたのだから、そのスピードには驚くばかり。そこに何があったのだろう。

 まず永井校長だが、元々県立高校の教員で、三瓶(みかめ)高校、松山西高校、松山東高校で都合11年間野球部長・顧問を務め、県高野連の理事も8年務めたほどの野球通。さらに硬式野球部の洲之内慶部長や岡田茂雄監督も、かねてより「女子が高校で野球を続けられなくなるのはかわいそうだ」という思いをもっていた。そのため、松山市からの打診に使命感のようなものを感じ、校内のコンセンサスを得るよう、急ピッチで話し合いを重ねたのだという。

 同校で野球をやりたい女子生徒は、普通科と工業科のうち普通科に入学し(工業科は男子のみ)、部活として硬式野球部を選択することになる。普通科にはスーパー特進コース、特進コース、総合進学コースの3つがあるが、どのコースからでも入部できる。

 野球専用グラウンドは広く、男子と一緒に練習することが可能で、校内に完備されているトレーニングルームで基礎体力作りなどもできるという。
 残念ながら女子寮はないが、県外をふくめ遠方から入学する選手には、松山市や市内の野球関係者などの協力も得ながら、下宿探しをしていきたいとか。

 指導者やスタッフについては、
「あくまでも教育の一環としての部活動であることから、できれば校内の教員で行うことができるよう調整したい」(永井校長)
 とのことだった。

 学校見学会が行われるので、詳しいことはそこで聞いてみるといいだろう。

学校見学会
●日時/8月17日(木)、18日(金)、ともに10時~12時30分(部活動体験は16時まで) 
●内容/学校紹介、校内自由見学、模擬授業体験、部活動体験(硬式野球部をふくむ)
●問い合わせ先/新田高校:電話089-951-0188
            :FAX 089-951-0190
         学校見学会については田村健先生へ。
         硬式野球部については洲之内慶先生へ問い合わせのこと。

※新田高校ホームページ/http://www.nitta.ac.jp/

硬式野球部専用グラウンド グラウンドはよく手入れされている

※写真提供/新田高校


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